仕事内容は嫌いじゃないのに辞めたい|「あの人・あの空気」が限界のときの判断基準と動き方

「あの人」が限界で辞めたい | やめどき研究所

「仕事内容自体は嫌いじゃないんです。でも、もう無理かもしれません」

そう感じているなら、まずお伝えしたいことがあります。それは、あなたの感覚は正常だということです。

私は今まで7回転職してきました。そのうちの一つ、運送業界で働いていた20代後半のことです。仕事内容そのものは、正直そこまで苦ではありませんでした。体を動かす仕事は嫌いじゃなかったし、覚えれば覚えるほど早く動けるようになる感覚も好きでした。

でも、上司が変わってから空気が一変しました。

無茶な指示を出され、その通りにやってもうまくいかず、指摘すると「それはお前の仕事だろ」と逆上される。言われてもいない仕事を、なぜやっていないんだと咎められる。おかしいと思っても、周りの同僚たちは上司の機嫌を察知して、私への扱いを少しずつ変えていきました。「長いものに巻かれろ」という空気の中で、気づいたら、いじめのような状態になっていたんです。

顧客からの理不尽なクレームも、自分が全く関わっていないミスも、なぜか私のせいにされる。同僚たちも何かトラブルが起きると「あいつのせいにしとけ」というような雰囲気で押し付けてきました。

仕事内容は好きだったのに、辞めました。理由は「あの人」と「あの空気」でした。

この記事では、私自身のその経験と、統計データ・公的な相談先の情報をもとに、

  • 「仕事内容は好きなのに辞めたい」というモヤモヤの正体
  • 辞めるべきかどうかの判断基準
  • 辞める前にできる対処と、それでも無理だったときの動き方

を、できるだけ具体的にお伝えします。


目次

「仕事は好き、でも人が無理」は珍しくない

まず知っておいてほしいのは、あなたと同じ悩みを抱えている人が、実はとても多いということです。

エン・ジャパンが2024年に行った調査(『エンゲージ』利用者5,168名対象)では、会社に伝えた退職理由の1位は「別の職種にチャレンジしたい」(22%)でした。一方で、会社には伝えなかった”本当の退職理由“を聞くと、1位は「人間関係が悪い」で46%にのぼっています。次に多い「給与が低い」(34%)を大きく上回る数字です。しかも、この「人間関係が悪い」という本音の割合は、2022年の35%から2024年には46%へと増えています。

つまり、多くの人が「本当は人間関係が理由なのに、そうは言わずに辞めている」ということです。厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」でも、転職理由の中で「職場の人間関係」は上位に入る項目の一つとされています。

これはとても大事なポイントです。「仕事内容は好きなのに人間関係だけで辞める」ことは、決して特殊なケースではなく、多くの人が経験しながら、それを表向きの理由にはしていないだけなんです。

さらに、退職代行サービスを提供する事業者の調査などでは、退職代行を利用する人は「無責任だから逃げる」タイプではなく、むしろ責任感が強く、簡単に人に頼れないタイプが多いという傾向が指摘されています。私自身も、あの運送屋での日々、誰かに「助けて」と言うより先に、自分でなんとかしようとしてしまうタイプでした。それが、結果的に一人で溜め込む時間を長くしてしまったと、今なら思います。

「仕事は好きなのに、人が無理で辞めたい」と思うあなたは、甘えているわけではありません。むしろ、頑張りすぎている側の人かもしれません。


なぜ「仕事内容×人間関係」で悩みの種類が変わるのか

同じ「辞めたい」でも、実は状況によって取るべき動きが変わります。まずは自分がどのパターンに近いか、整理してみてください。

仕事内容が好き仕事内容も苦手
人間関係も良好辞める理由は薄い。今は続ける選択も検討の余地あり異動・業務変更の相談を先に検討
人間関係が悪い(特定の人・空気)★このケース。環境(人・部署)だけが問題の可能性全体的な見直しが必要。休養も検討

このうち★の「仕事内容は好きだけど、特定の人や職場の空気だけがしんどい」というケースは、実は一番判断が難しいパターンです。仕事そのものへの不満がない分、「こんなことで辞めるなんて」「自分が我慢すればいいのでは」と、自分を責めやすいんです。

私も、仕事自体は嫌いじゃなかったからこそ、「これくらい我慢すべきかも」と長く抱え込んでしまいました。でも、仕事内容が好きであることと、その環境にいて心身が壊れていくことは、まったく別の話です。「仕事は好き」は、辞めない理由にはなりません。


辞めるべきかどうかの判断基準

とはいえ、いきなり「辞めましょう」とは言いません。ここでは、私自身の経験を踏まえた「見切りをつける基準」をお伝えします。

私が「これ以上は無理」と判断した基準

運送屋時代、上司からの理不尽な扱いと、それに便乗するような同僚たちの空気の中で、私が最終的に「もう無理だ」と見切りをつけた基準は、自分一人ではもう完全に対処できないと判断したことでした。

上司に指摘しても状況は変わらず、周りに相談しても「まあ、あの人だから」で流されてしまう。自分のせいではないミスやクレームまで押し付けられる状況が、自分の努力や工夫だけでは変えられないところまで進んでしまっていた。そう感じたときが、私にとっての限界でした。

判断のためのチェックリスト

以下に当てはまる項目が多いほど、「一人で抱え込むべき状況ではない」可能性が高くなります。

  • 同じ問題について、複数回・複数の相手(上司・同僚)に相談・指摘したが、改善が見られない
  • 自分の関与していない問題まで、責任を負わされることが繰り返されている
  • 周囲が「見て見ぬふり」または「便乗」するような空気になっている
  • 出社前に体調不良(腹痛・動悸・眠れないなど)が出てきている
  • 「自分が悪いのかもしれない」と、理不尽なことでも自分を責めるようになっている
  • 部署異動や業務内容の変更でも解決できない、”人・空気”そのものの問題である

もし心身の不調(強い不眠、食欲不振、消えたいと感じるなど)がすでに出ているなら、判断基準を細かく考える前に、まずは心身を休めること・専門家に相談することを最優先にしてください。この記事の対処法より先に、医療機関や後述する公的窓口に頼ることを選んでください。


辞める前にできること(試す価値のある対処)

見切りをつける前に、できることがいくつかあります。実際に効果があるかどうかはケースによりますが、試して後悔はしない範囲のものです。

1. 記録を残す

理不尽な指摘、押し付けられたミス、周囲の対応の変化などを、日付・内容とともに簡単にメモしておく。後で異動や相談、あるいは退職の際に、自分の状況を整理して伝えるための材料になります。私は当時、これをやっていませんでした。今思えば、感情だけで抱え込んでしまい、状況を客観的に説明することが難しくなっていたと感じます。

2. 「その人」だけの問題か、「空気」全体の問題かを見極める

上司個人の言動が問題なのか、それに同調する周囲の空気まで含めて職場全体の問題なのか。前者なら異動や部署変更で解決する可能性がありますが、後者、私のケースのように上司の態度に同僚まで巻かれてしまっている状態は、部署内での解決が難しくなっていることが多いです。

3. 社内外の相談窓口を使う

一人で抱え込まず、社内の相談窓口(人事・産業医)や、社外の公的窓口を使うという選択肢があります。特に、パワハラのような言動が絡む場合は、次の窓口を知っておいてください。

  • こころの耳(厚生労働省):働く人やその家族向けの無料相談窓口。匿名で電話・SNS・メールで相談できます。電話相談は平日17:00〜22:00、土日10:00〜16:00(祝日・年末年始を除く)、電話番号は0120-565-455です。
  • 総合労働相談コーナー:各都道府県の労働局・労働基準監督署内に設置されており、職場のトラブルについて解決方法の提案や、関係機関の紹介を受けられます。

なお、「パワハラなら労基署に相談すればすぐ解決する」というのは、実は誤解です。労働基準監督署は、賃金や労働時間など労働基準法違反の取り締まりが主な役割で、パワハラのような職場内の人間関係トラブルには直接対応できない場合があります。まずは総合労働相談コーナーや、こころの耳のような窓口に相談するのが、実際に動いてもらいやすい順番です。

また、2020年に施行された「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法)により、企業には防止措置を講じる義務があります。2022年からは中小企業も義務化の対象です。ただし、この法律に罰則規定はなく、違反した事業主には厚生労働大臣による勧告と、勧告に従わない場合の公表制度があるのみです。「法律があるから会社が必ず動く」とまでは言えないのが実情ですが、相談する際の後ろ盾の一つにはなります。


それでも無理だったら:辞めるという選択

対処を試しても状況が変わらない、あるいはすでに心身の限界が近いと感じるなら、辞めるという選択を検討してください。辞めることは、逃げではありません。

日本の民法では、雇用期間に定めがない場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用契約は終了するとされています(民法第627条第1項)。労働者には「退職の自由」があり、退職に会社の同意や承諾は必要なく、理由も問われません。就業規則で「1ヶ月前に申し出ること」などと定められているケースもありますが、一般的にはこの民法の規定が優先されるという解説が多く見られます。ただし、個別の事情によって扱いが異なる場合もあるため、判断に迷う場合は専門家(弁護士や労働組合)に確認することをおすすめします。

直接言えないときは、退職代行という選択肢もある

「上司に直接、辞めますと言うのが怖い」「もうその人と顔を合わせたくない」。これは、私も痛いほどわかります。あの上司と、あの空気の中で、正面から「辞めます」と言うのは、想像するだけで気が重かったと思います。

そういうときのために、退職代行というサービスがあります。ただし、選び方には注意が必要です。

退職代行には、大きく分けて「民間業者」「労働組合運営」「弁護士運営」の3種類があります。

  • 民間業者:意思伝達が中心で、料金は比較的安い傾向にありますが、有給消化や退職条件の交渉はできない場合があります。
  • 労働組合運営:団体交渉権があるため、有給消化などの交渉が可能とされています。
  • 弁護士運営:退職交渉の代理権があり、未払い賃金の請求やパワハラの慰謝料請求など、法的な対応が必要な場合にも対応できます。

料金相場は、業者によって1万円〜10万円程度と幅があります(※執筆時点の目安であり、実際の料金は各社の公式サイトで必ず確認してください)。

ここで一つ、知っておいてほしいことがあります。弁護士資格を持たない業者が、報酬を得て有給交渉や未払い賃金の請求といった「法律事務」を行うことは、弁護士法72条により禁止されています(いわゆる非弁行為)。 実際に、2025年から2026年にかけて、こうした非弁行為の疑いで運営元が捜査を受け、代表者が逮捕された退職代行業者もありました。「弁護士監修」といった言葉だけで「交渉もできる」と判断するのは危険で、交渉を行えるのは、行為の主体が労働組合または弁護士である場合に限られます。

私がこの記事であなたに勧めたいのは、労働組合運営、または弁護士運営の退職代行に限ることです。安さだけで選んで、後から「交渉してもらえなかった」「トラブルになった」ということにならないよう、運営元がどこなのかを必ず確認してください。運営形態別の詳しい比較は、こちらの記事でまとめています。

関連記事:「【業者比較】退職代行の評判・口コミ|料金と運営元で選ぶ失敗しない選び方」

なお、退職代行の利用率については、マイナビの調査(2024年10月発表)では直近1年の転職者のうち16.6%、パーソル総合研究所の調査(2025年12月発表)では離職者全体の5.1%と、調査によって数字に差があります。母集団の違いによるものですが、いずれにしても「一定数の人が実際に使っている」選択肢であることは間違いありません。


よくある不安・Q&A

Q. 「人間関係だけ」で辞めるのは甘えでしょうか?

甘えではありません。エン・ジャパンの調査では、退職の”本当の理由”の46%が「人間関係が悪い」でした。ただ、会社にはその理由をそのまま伝えていない人が多いのも事実です。伝え方は工夫が必要ですが、辞める理由として人間関係が不十分ということはありません。

Q. 上司や環境が問題なら、異動や部署変更で解決できませんか?

個人の言動だけが問題なら異動で解決する可能性があります。ただ、私のケースのように周囲まで巻き込まれて「職場全体の空気」になってしまっている場合、異動だけでは解決しにくいことがあります。まずは記録を取りながら、社内外の相談窓口に一度状況を話してみることをおすすめします。

Q. 次の職場でも同じことが起きないか不安です。

面接の段階で、職場の雰囲気や離職率、実際の1日の働き方について質問することで、ある程度は事前に見えてくる部分もあります。ただ、100%見抜くことは誰にもできません。「同じことが起きたら、また別の手を打てる」という自分なりの対処の経験値が、実は一番の安心材料になります。

Q. 心身の不調が出ているけれど、まだ頑張れる気もします。

その「まだ頑張れる気がする」という感覚こそ、注意してほしいポイントです。判断基準やチェックリストより先に、まずは心身を休めること、こころの耳などの窓口に相談することを優先してください。


まとめ:仕事が好きでも、辞めていい

仕事内容そのものは嫌いじゃなかった。それでも、あの人と、あの空気の中で、私は辞めるという選択をしました。今振り返っても、それは間違いではなかったと思っています。

「仕事は好きなのに辞めたい」という悩みは、一人で抱えやすく、周りにも理解されにくいものです。でも、統計を見ても、それはあなただけの特殊な悩みではありません。

もし今、心身に不調が出ているなら、まずは休むこと、こころの耳や総合労働相談コーナーのような公的窓口に相談することから始めてください。

そして、対処を尽くしても状況が変わらない、あるいは上司に直接言うことがどうしても難しいなら、労働組合運営・弁護士運営の退職代行という選択肢もあります。焦って安さだけで決めず、自分の状況に合った動き方を選んでください。

あなたが「これ以上は無理だ」と感じたその感覚を、まずは信じてあげてください。

関連して、「そもそも辞めると言い出せない」という段階の方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

関連記事:「退職を言い出せない・怖いときの対処法|20代の私が『嘘』で逃げた話」
関連記事:「しつこい引き止めの断り方|情に流されず辞める言い方」


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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