「自己都合で辞めたら、しばらく失業保険がもらえないんですよね……?」
退職を考えている人から、こういう不安をよく聞きます。私自身、3年前に適応障害で前職を辞めたとき、まさにこの空白期間を経験しました。「辞めたいのに、お金の不安で辞める決断ができない」という気持ち、痛いほどわかります。
実は2025年4月の制度改正で、自己都合退職の「給付制限」の仕組みが少し変わりました。この記事では、
- 自己都合退職で失業保険がいつからもらえるのか
- 会社都合との違い
- 制限を短くできる可能性がある方法
- 実際に生活が苦しくなりやすいポイントと、その備え方
を、私の体験も交えながら、なるべく専門用語をかみ砕いて整理します。ただし雇用保険の制度は個別の事情でかなり判断が変わるものです。最終的な判断は、必ずお近くのハローワークで確認してください。
自己都合退職は「もらえない」わけではなく「少し遅れる」
まず大前提として、自己都合で辞めても失業保険(基本手当)自体は受け取れます。「自己都合=もらえない」ではなく、「会社都合に比べて、もらい始めるタイミングが遅く、日数も短くなりやすい」というのが正確なところです。
ここを混同して「自己都合だから諦めよう」と思ってしまう人が意外と多い印象があります。
自己都合退職の主な流れ
- ハローワークで離職票を提出し、受給資格の決定を受ける
- 7日間の「待期期間」(これは自己都合・会社都合どちらも共通)
- 正当な理由のない自己都合退職の場合は、待期後にさらに「給付制限」がかかる
- 給付制限が終わると、基本手当の支給が始まる
この「3」の給付制限の長さが、2025年4月の改正で変わったポイントです。
2025年4月改正のポイント:給付制限は「原則1ヶ月」に短縮
厚生労働省の情報によると、正当な理由のない自己都合退職の場合の給付制限期間は、以下のように整理されています。
- 2025年3月31日以前に退職した場合:原則2ヶ月
- 2025年4月1日以降に退職した場合:原則1ヶ月
つまり、これから自己都合で辞める人にとっては、以前より1ヶ月早く受給が始まる可能性がある、ということです。これは地味に見えて、生活防衛の観点ではかなり大きな違いだと思います。
3ヶ月になる例外もある
一方で、以下のようなケースでは給付制限が3ヶ月になるとされています。
- 離職日からさかのぼって5年間のうちに、正当な理由のない自己都合退職を繰り返している場合(回数のカウント方法については、厚労省の文言にも表現の幅があり、細かい解釈は個別事情によって変わるようです。ここは自己判断せず、必ずハローワークで確認することをおすすめします)
- 自分の責任による重大な問題行動で解雇された「重責解雇」に該当する場合
短期間で転職を繰り返している人や、離職理由に不安がある人は、この例外に該当しないか、事前に窓口で確認しておくと安心です。
給付制限が「解除」されるケースもある
意外と知られていませんが、離職日前1年以内、または離職後に一定の教育訓練(教育訓練給付の対象になる講座など)を受けたことがある人は、給付制限そのものが対象外になる、とされています。
これは、いわゆる「リスキリング」を後押しする改正の一環のようです。もし退職を考えている段階で「この講座、前から気になっていた」というものがあれば、対象講座かどうかを厚生労働省の教育訓練給付制度の検索システムなどで調べてみる価値はあります。ただし、受講のタイミング(受給資格が決まる前か後か)によって扱いが変わる可能性があるため、ここも個別にハローワークへの確認が必要です。
いくら・どれくらいの期間もらえるのか
所定給付日数(自己都合=一般受給資格者の場合)
自己都合退職の場合、もらえる日数は年齢ではなく「雇用保険に加入していた期間」で決まります。
| 被保険者期間 | 所定給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
自己都合の場合は年齢に関係なく、最大でも150日が上限です。一方で会社都合(特定受給資格者)は、年齢や加入期間によって最長330日まで伸びることがあり、ここは自己都合との大きな差になっています。
受給資格が得られる条件
- 自己都合退職:離職日からさかのぼって2年間で、被保険者期間が通算12ヶ月以上必要
- 特定受給資格者・特定理由離職者:離職日からさかのぼって1年間で、通算6ヶ月以上あればよい(条件が緩和されている)
自分の雇用保険の加入期間があいまいな人は、雇用保険被保険者証やハローワークでの確認をおすすめします。
1日あたりの支給額(基本手当日額)
基本手当日額は、離職前6ヶ月の賃金合計を180で割った「賃金日額」に、年齢や賃金水準に応じた給付率(おおむね50〜80%、60〜64歳は45〜80%)をかけて計算される、という考え方が一般的です。ただし給付率の詳細な区分表までは今回の確認では追いきれていないため、あくまで「目安」として捉えてください。
また、上限額・下限額は物価や賃金水準の変化に応じて、原則毎年8月に見直されています。参考までに、確認できた直近の数値は以下の通りです(必ずご自身が退職する時点の最新情報を、厚生労働省やハローワークのサイトで確認してください)。
- 下限額:2,562円程度
- 上限額:年齢区分によって異なり、30歳未満で7,450円程度、45〜60歳未満で9,110円程度など
数字が更新されるタイミングに退職が重なると、シミュレーションの前提がずれることもあるので、「今の金額が来年もそのまま」とは考えないほうが安全です。
会社都合との違いを整理する
読者の方からよく聞かれるのが、「結局、自己都合と会社都合でどれくらい差があるのか」という質問です。ざっくりまとめると、こうなります。
| 項目 | 自己都合(一般受給資格者) | 会社都合(特定受給資格者) |
|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1ヶ月(2025年4月以降)※例外3ヶ月 | 原則なし |
| 所定給付日数 | 90〜150日(年齢は関係なし) | 最大330日(年齢・加入期間による) |
| 受給資格要件 | 離職前2年で12ヶ月以上 | 離職前1年で6ヶ月以上 |
こうして並べると、会社都合の方が明らかに有利です。だからこそ「離職票の理由が実態と違う」と感じる人が異議を申し立てるケースもあります。ただし、これは会社との交渉や証拠集めが必要な、それなりに手間のかかる話です。パワハラや長時間労働など、離職理由に納得がいかない事情がある場合は、自己判断で諦める前に、労働基準監督署や弁護士・社労士への相談を検討してみてください。
「自己都合」でも制限が緩和される「特定理由離職者」
体力の低下や病気、家族の介護、通勤が困難になったなど、やむを得ない事情での自己都合退職は「特定理由離職者」として扱われ、給付制限が免除されたり、受給資格の条件が緩和されたりする可能性があります。
ただし、これは自動的に認定されるものではなく、診断書などの客観的な証拠を提出したうえで、ハローワークが個別に事実関係を確認して判断する、という前提があります。「自分はこれに当てはまりそうだ」と思ったら、まずは正直にハローワークの窓口で状況を話してみることをおすすめします。
私が経験した「待つ期間」のこと
制度の説明はここまでにして、ここからは実体験の話です。
私は3年前、適応障害で前職を辞めたあと、失業保険を申請しました。
正直に書くと、当時は制度のことをよく理解しないまま手続きをしていました。診断書のやり取りなども、自分で出したのか会社が出してくれたのか、記憶が曖昧なほどです。それくらい、心身ともに余裕がありませんでした。
はっきり覚えているのは、給付が始まるまで2〜3ヶ月ほど待った、ということです。その間、収入はありません。「本当に振り込まれるんだろうか」「それまで生活はもつだろうか」と、不安を抱えたまま過ごしていました。
私が待ったのは、ちょうど改正前の「原則2ヶ月」の給付制限があった時期にあたります。今なら原則1ヶ月に短縮されているので、同じ状況でも1ヶ月早く給付が始まる可能性があります。この1ヶ月の差は、当時の私にとっては本当に大きかったはずです。
そして、給付期間が終わった後も、次の仕事はすぐには決まりませんでした。結局、日雇いのアルバイトで日銭を稼ぎながら、転職活動を続けることになりました。
今振り返って思うのは、「制度を知らなかったこと」以上に、「辞める前に生活防衛費を準備していなかったこと」が一番の問題だった、ということです。給付制限が1ヶ月に短くなったとはいえ、収入がない期間は必ず発生します。もし今、退職を考えているなら、
- 最低でも1〜2ヶ月分の生活費は手元に残しておく
- 退職前に、自分の雇用保険の加入期間や離職理由の見込みを確認しておく
- 教育訓練での給付制限解除など、使える制度がないか調べておく
この3つだけでも、当時の私よりずっと安心して辞められるはずです。
ただし、これは「準備が整うまで辞めるな」という意味ではありません。心身が限界なら、準備より先に離れることを優先してください。私自身、そうやって辞めた側の人間です。
よくある不安・Q&A
Q. 給付制限中、アルバイトをしてもいいですか?
一定時間内であれば認められる場合がありますが、必ず申告が必要とされています。無申告での就労は不正受給とみなされるリスクがあるため、判断に迷う場合は正直にハローワークに相談するのが安全です。
Q. 離職票の退職理由が、自分の認識と違います。
会社側の記載に納得がいかない場合、ハローワークで異議を申し立てられる場合があります。ただし、証拠や事情の説明が必要になることが多いようです。パワハラや契約と異なる労働条件などが背景にある場合は、労働基準監督署や弁護士・社労士に相談することも選択肢です。
Q. 5年以内に何度も自己都合で辞めていますが、大丈夫でしょうか?
繰り返しの自己都合退職は給付制限が3ヶ月になる可能性があるとされていますが、カウントの仕方には解釈の幅があるようです。心配な場合は、退職前にハローワークで自分のケースを確認しておくと安心です。
Q. 体調不良やメンタル不調が理由での退職でも、給付は不利になりますか?
体力の不足や心身の不調が理由の場合、「特定理由離職者」として扱われる可能性があります。診断書など客観的な資料が必要になることが多いようなので、退職前に医療機関やハローワークに相談しておくとスムーズです。ただし、私自身の経験でいうと、心身が限界の状態では、制度を調べて交渉する気力そのものが残っていないこともあります。もし今、その状態にあるなら、失業保険の手続きより先に、まずは休むこと・専門家に相談することを優先してください。
まとめ:知っているかどうかで、辞めた後の安心感が変わる
自己都合退職でも、失業保険はもらえます。2025年の改正で給付制限も短くなり、以前より少しだけ「辞めた後」のハードルは下がりました。
とはいえ、給付が始まるまでには必ず空白の期間があります。私自身、2〜3ヶ月をただ待つ苦しさを経験しているからこそ、「辞める前に、生活費と制度の両方を少しでも把握しておくこと」を強くおすすめしたいです。
もし「そもそも会社に退職を言い出せない」「もう辞めたいのに動けない」という段階であれば、まずはそちらの整理から始めるのも一つの手です。こちらの記事もあわせて参考にしてください。
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一人で抱え込まず、使える制度と情報を味方につけて、少しでも安心して次の一歩を踏み出せますように。
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