「辞めます」と言えたその日は、たしかにホッとしますよね。
でも、その翌日から、また別の不安が始まります。
「お金、大丈夫かな」「これで良かったのかな」「次、ちゃんと決まるのかな」
私は7回転職してきましたが、正直に言うと、この「辞めた後」の不安は毎回ありました。むしろ、辞める前より辞めた後の方が長く不安を抱えていた気がします。
この記事では、私自身の経験と、公的な制度・最新のデータをもとに、
- 辞めた後に直面する「お金」のリアル
- 保険・税金まわりで意外と知られていない落とし穴
- 「後悔しない辞め方」のために私が実践していたこと
- 実際に転職した人はどれくらい後悔しているのか
を、できるだけ具体的にまとめました。「辞めた後どうなるか分からない」という漠然とした不安を、少しでも輪郭のあるものに変えられたらと思います。
悩みの正体:不安の中身は「お金」「保険・税金」「決断への後悔」の3つ
辞めた後の不安をよく分解してみると、だいたいこの3つに集約されます。
- お金:収入が止まる(減る)ことへの不安
- 保険・税金:会社が代わりにやってくれていた手続きを、自分でやらなければいけないことへの戸惑い
- 後悔:この決断は正しかったのか、次はうまくいくのか、という気持ちの部分
どれも「知らないから怖い」という側面が大きいです。逆にいうと、制度や実際のデータを知っておくだけで、不安のかなりの部分は減らせます。順番に見ていきます。
具体的な対処・方法
お金の不安:失業保険はどれくらい・いつからもらえるのか
私は若いころ、貯金がほとんどない状態で転職を繰り返していました。頑張っている時間や労力に対して、給料が見合っていないと感じることが多く、正直「辞めたいけどお金が不安」という状態がずっと続いていたんです。
今振り返れば「貯金しておけばよかった」と思います。ただ、当時の状況を思い出すと、実際にそれをやるのはかなり難しかったというのが正直なところです。生活費を切り詰める余裕自体がない時期もありました。
だからこそ、貯金だけに頼らず、制度としてどれだけ支えてもらえるかを知っておくことは大事だと思っています。
会社員として雇用保険に入っていた方が離職すると、「基本手当」(いわゆる失業保険)を受け取れる可能性があります。ポイントは次の通りです。
- 自己都合退職の場合:これまでは7日間の待機期間に加えて2ヶ月の給付制限期間がありましたが、2025年4月から、この給付制限期間が原則1ヶ月に短縮されています。
- ただし、過去5年以内に3回以上自己都合で退職している場合は、給付制限が3ヶ月になる点は注意が必要です。「自己都合=必ず1ヶ月」というわけではないので、ご自身の離職回数によって条件が変わる可能性があることは覚えておいてください。
- 会社都合退職(特定受給資格者等)の場合は、そもそも給付制限がなく、より早く受給が始まる仕組みになっています。
もらえる金額(基本手当日額)は、退職前6ヶ月の賃金をもとに計算され、給与水準に応じて50〜80%程度が目安とされています。ただし上限額・下限額は毎年8月に見直しがあり、年齢区分によっても変わるため、具体的な金額を知りたい方は、ハローワークや厚生労働省の最新情報で確認することをおすすめします。ここでざっくりした数字を出すより、そちらの方が確実です。
保険・年金:切り替えを忘れると後で困る
在職中は会社がやってくれていた社会保険の手続きも、辞めた後は自分で選んで動く必要があります。
健康保険は、主に2つの選択肢があります。
- 任意継続被保険者制度:退職前の健康保険に、最大2年間そのまま加入し続けられる制度です。保険料は退職時の給料を基準に決まり、2年間変わりません。ただし、在職中は会社が半分負担してくれていた分も、退職後は全額自己負担になります。なお、加入するには退職日までに被保険者期間が継続して2ヶ月以上あることが条件です。
- 国民健康保険:前年の所得をもとに保険料が決まります。退職直後で収入が減っていても、1年目は前年分の所得で計算されるため負担が重く感じやすく、2年目以降は軽くなっていくケースが多いです。また、国民健康保険には扶養という考え方がないため、家族がいる場合はその人数分保険料が増える点も、任意継続との大きな違いです。
どちらが得かは、前年の所得や家族構成、お住まいの自治体の保険料率によってかなり差が出ます。「一般的にはこっちが安い」と一概には言えないので、お住まいの自治体や、加入していた健康保険組合に、実際の金額を試算してもらうのが確実です。
年金については、厚生年金には任意継続の制度がないため、60歳未満の方は基本的に国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があります。すぐに次の会社の厚生年金に入る、あるいは配偶者の扶養(第3号被保険者)に入る場合は手続きが変わってきますので、ここも自己判断せず、市区町村の窓口で確認するのが安全です。
住民税:辞めた翌月に「なぜこんなに?」と驚く人が多いポイント
これは意外と見落とされがちなのですが、住民税は「前年の所得」に対してかかる税金です。退職して収入がゼロ、あるいは大きく減った後でも、前の年に稼いでいた分の住民税は、変わらず支払う必要があります。
しかも、いつ辞めたかによって支払い方が変わります。
- 1月1日〜4月30日に退職した場合:原則として、その年5月分までの住民税の残額が、最後の給与や退職金からまとめて天引き(一括徴収)されます。
- 6月1日〜12月31日に退職した場合:原則として「普通徴収」に切り替わり、自分で納付書を使って支払うことになります(本人が希望すれば一括徴収も可能です)。普通徴収の場合、通常は年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて納めます。
「辞めた後、収入がないのに住民税の納付書が届いて焦った」という声はよく聞きますが、これは制度上そうなる仕組みなので、驚く必要はありません。辞める時期によって、その後の住民税の払い方が変わる、ということだけ、頭の片隅に置いておくといいと思います。
後悔しないための私のやり方:「決めてから辞める」、でも時間はかかる
私が7回の転職で徹底していたのは、次の転職先を決めてから辞める、ということです。無収入の期間を作らないようにするための、自分なりの防衛策でした。(ただし、3年前に適応障害で辞めたときだけは、そんな余裕もありませんでしたが。)
ただ、次が決まっていても、それを正直に会社へ伝えられるとは限りません。私自身、同じ業界へ移るときは「そんな会社より、ここで頑張った方が成長できる」と言いくるめられるのが怖くて、本当の転職先を言えなかったことがあります。
ただ、これには一つ大きな誤算がありました。転職活動を始めてから内定をもらうまで、半年〜1年近くかかることが多かったんです。在職しながらの転職活動は、面接の日程調整一つとってもなかなか時間が取れず、思った以上に長丁場になります。
「辞めたい」と思ってから、実際に動けるようになるまでにタイムラグがあるのは当然のことです。もし今「辞めたいけど、次が決まっていないから動けない」と感じているなら、それは決して焦る必要がある話ではなく、むしろ普通のペースだと思っておいてください。
(どうしても在職中に活動する時間や心の余裕が取れない、あるいは会社に伝えること自体が怖いという場合、退職代行という選択肢を検討する方もいます。ただしこれは弁護士・労働組合が運営するものに限った方が安全です。詳しくはこちらの記事へ。)
実際、転職した人はどれくらい後悔しているのか
自分の決断に自信が持てないとき、他の人がどうだったかを知ると、少し気持ちが軽くなることがあります。
いくつかの調査結果を見てみるとー
- ある調査(OpenWork、2025年7月時点)では、転職後に後悔した人の割合は11.4%で、後悔の理由の第一位は「賃金」だったとされています。つまり10人に1人程度は後悔しているという結果です。
- 別の調査(株式会社スコラ・コンサルト、2025年9月発表)では、転職経験者の61.8%が「今の会社の方が良い」と評価し、「前の会社の方が良い」と答えた人はわずか7.8%という結果も出ています。
この2つの数字(11.4%と7.8%)は調査主体も時期も母集団も違うため、単純に同じ指標として比べることはできません。ただ、どちらの調査を見ても、「転職して後悔している人」は少数派であるという傾向は共通しています。
また、2025年の正社員転職率は7.6%と過去最高水準になっており、特に40代・50代の転職率が上がっています(マイナビ調査等)。転職後の平均年収は533.7万円で、転職前より平均19.2万円増加しているというデータもありますが、これは年代によって差があり、50代のみ平均で減少しているという結果も出ています。年齢や状況によって結果は変わる、ということは正直にお伝えしておきます。
よくある不安・Q&A
Q. 貯金がほとんどないのですが、辞めても大丈夫でしょうか。
A. 正直に言うと、私も若いころは貯金がない状態で何度も転職してきました。ゼロが理想ではありませんが、ゼロだから絶対に辞められない、ということもありません。失業保険の給付制限が短縮されたこと、会社都合であれば制限自体がないことなど、使える制度を先に調べておくと、見える景色が変わってきます。
Q. 保険や税金の手続き、何から手をつければいいですか。
A. まずは在職中に、会社の総務・人事に「退職後の手続きで必要な書類」を確認しておくのが一番確実です。健康保険証の返却タイミングや、離職票がいつ届くかなど、会社によって流れが違います。分からないことは恥ずかしがらず、辞める前に聞いてしまうのがおすすめです。
Q. 次が決まるまでどれくらいかかりますか。焦った方がいいですか。
A. 私の経験では、半年〜1年かかることも珍しくありませんでした。もちろん個人差はありますが、「決まらない自分がダメなんじゃないか」と自分を責める必要はないと思います。
まとめ:辞めた後のことは、知れば知るほど怖くなくなる
「辞めた後どうなるか分からない」という不安の正体は、多くの場合「知らないこと」です。
- 失業保険の給付制限は、2025年4月から短縮されている
- 保険・年金の切り替えは、自分の状況に合わせて選べる
- 住民税は前年の所得にかかるので、退職後も一定期間は請求が来る
- 転職して後悔している人は、調査を見る限り少数派
私自身、貯金がない状態からの転職を何度も経験しましたが、それでもなんとかやってこられました。完璧に準備してから動く必要はありません。
もし今、心身がかなり限界に近い状態なら、まずは動く前に、少し休むこと・誰かに相談することを優先してください。動くのは、それからでも遅くはありません。
次の一歩として、「辞めた後、実際にどう動いていくか」についてはこちらの記事でまとめています。あわせて読んでみてください。
