休職代行は使うべき?退職代行との違いと、メンタルで「言い出せない」人の現実的な選び方

休みたいと言い出せない人に向けた、休職代行と退職代行の違いと選び方の解説

「もう限界かもしれない。でも、辞める決心はつかない」

そんな状態で、この記事にたどり着いた方もいるかもしれません。

私は約3年前、前の職場で体調を崩し、休職しました。休職したいとは思っていたものの、自分から会社に言い出すことはできませんでした。心療内科で適応障害と診断され、医師に休職を勧められて診断書を書いてもらったことで、ようやく会社に伝えることができたのです。

休職中は傷病手当金を受け取りながら、このまま休職を続けるか、辞めるかを迷い続けました。最終的には、迷った末に退職を選びました。

いま「退職代行」と並んで、「休職代行」というサービスが少しずつ知られるようになってきました。辞めるのではなく、いったん仕事から離れることを前提にした選択肢です。この記事では、休職代行がどんなサービスで、退職代行と何が違うのか、そして「言い出せない」あなたにとって現実的な選び方は何かを、できるだけ具体的に整理していきます。

目次

休職代行とは何か。退職代行との決定的な違い

休職代行とは、心身の不調などで会社をしばらく休みたい人に代わって、会社に休職したいという意思を伝え、休職を始めるまでの連絡や、診断書の提出などの段取りを手伝うサービスです。

退職代行との一番の違いは、雇用関係を終わらせるかどうかです。退職は会社との契約そのものを終える手続きですが、休職は雇用契約を続けたまま、一定期間だけ仕事を離れる仕組みです。

つまり、休職代行は「辞める・辞めない」を今すぐ決めなくていい選択肢とも言えます。退職は、一度決めると元に戻すのが難しい選択です。一方で休職は、判断を急がず、いったん距離を置いてから、戻るか辞めるかを考え直す時間をくれるものです。

ただし注意したいのは、休職制度そのものは法律で義務付けられているわけではないという点です。休職の有無や期間、給与の扱いは、会社の就業規則によって違います。そもそも就業規則に休職の定めがない会社もあります。休職代行を使えば必ず休める、というものではなく、あくまで会社の制度の範囲で、意思を伝えて手続きを進めるのを手伝うサービスだと理解しておく必要があります。

なぜ「休みたい」と言い出せないのか

休職代行というサービスが広がってきた背景には、「言い出せない」人が決して少なくないという現実があります。

産経新聞の報道(2026年7月)によると、約10年前から休職代行を請け負ってきた弁護士のもとには、この春から依頼が倍増し、月に40件近くの案件を抱えるようになったといいます。利用者は若手の会社員から40〜50代の中間管理職まで幅広く、公務員、特に教職員や自衛官の利用が目立つと報じられています。

同じ報道の中で、この弁護士は「(依頼者は)出社できる状態にない場合も多く、職場との交渉でよりメンタルが悪化する恐れもある」と話しています。心身がすでに限界に近いからこそ、自分で言い出す余力が残っていない。だから代わりに伝えてくれる存在が必要になる、ということなのだと思います。

私も、休みたい気持ちはあっても、自分の口からは言えませんでした。私の場合は、医師の診断書が、会社に伝えるきっかけになりました。

厚生労働省の「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」でも、過去1年間にメンタルヘルスの不調で連続1か月以上休業した労働者か、退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%でした(前年は12.8%)。休業した労働者がいた事業所に限っても10.8%で、決して珍しい話ではないことが分かります。

体調が悪いまま「辞めるか、続けるか」を決めようとしても、落ち着いて考えるのは難しいものです。休むことは逃げではなく、先のことを考えるための時間を確保することでもあります。

休職代行を選ぶなら。運営形態ごとの違いと注意点

休職代行を検討するなら、まず知っておきたいのが、運営しているのが誰かによる違いです。これは、退職代行とまったく同じ構造の問題です。

弁護士でない人が報酬を得て法律事務を扱うことは、弁護士法第72条で禁じられています。休職代行でも同じで、会社との「交渉」に踏み込んでしまうと、非弁行為(弁護士でない人が報酬目的で法律事務を行うこと)にあたるおそれがあります。

  • 民間業者:基本的にできるのは、本人の意思を会社に伝えることまでです。休職の条件をめぐって会社と交渉することはできません。会社によっては、民間業者からの申し出には応じない方針をとっているところもあります。
  • 労働組合:労働組合法の要件を満たす組合であれば、団体交渉権にもとづいて会社と交渉することができます。
  • 弁護士:代理人として、会社との交渉や法的な手続きを行うことができます。

会社には、働く人の心身の安全に配慮する義務(労働契約法第5条の安全配慮義務)があります。医師が休養が必要だと診断しているのに、会社が正当な理由なく出勤を強いた場合は、この義務違反として責任を問われる可能性もあると指摘されています。ただし、法的な評価は個別の事情によって変わるため、気になる場合は専門家に確認してください。

退職代行の世界では、この一線を越えたことで大きな問題になった事例があります。退職代行サービス「モームリ」を運営する会社の前社長と妻が、利用者を報酬目的で弁護士にあっせんしたとして2026年2月に逮捕され、2026年8月に東京地裁で有罪判決を受けました。あっせんを受けた弁護士側も起訴されています。

関連記事:大手退職代行業者の弁護士法違反事件でわかった落とし穴|弁護士・労組・民間の違いと安全な選び方

この事件が教えてくれるのは、「安さ」や「対応の速さ」だけで選ぶ危うさです。休職代行を検討するなら、意思を伝えるだけで済むのか、交渉が必要になりそうなのかを見極め、交渉の可能性があるなら労働組合か弁護士が運営するサービスを選ぶのが安全です。料金は運営形態やオプション(傷病手当金の申請サポートなど)によって幅があるため、気になるサービスがあれば公式サイトで最新の料金を確認してください。

休職中のお金はどうなるのか。傷病手当金の基礎知識

休職を迷う理由の中でも大きいのが、お金の不安だと思います。収入が止まってしまうのではないかという心配は、言い出せない気持ちに拍車をかけます。

業務外の病気やけがで働けなくなった場合、健康保険には傷病手当金という制度があります。健康保険法第99条第2項により、1日あたりの支給額は「支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2」と定められています。おおまかに言えば、普段の給与のおよそ3分の2が目安です。

支給されるのは、仕事を休んだ日が連続して3日続いたあと(待期期間)の4日目からで、期間は同じ病気やけがについて、支給が始まった日から通算して1年6か月です。業務外の病気やけがで働けないこと、休んだ期間に給与が出ていないことなど、一定の条件を満たす必要があります。詳しい条件や申請の手続きは、加入している健康保険組合や協会けんぽに確認してください。

私自身、休職中に傷病手当金を受け取っていました。休職を続けるか辞めるかを考えるなかで、退職日を決める前に、退職後も受け取り続けるための条件を健康保険組合に何度も電話で確認しました。休職から退職に進む可能性がある人は、早めに確認しておくと安心です。

関連記事:診断書を出しても動かない会社へ

公務員の場合は、制度の仕組みが少し違います。国家公務員には、医師の証明などにもとづいて療養に専念できる病気休暇の制度があり、人事院規則により原則として連続90日まで取得できます。それを超えて休む場合は病気休職に移り、一般的には給与が減額される仕組みです(地方公務員にもおおむね同じような制度がありますが、詳しくは自治体の条例によって違います)。公務員の方は、自分の所属先の規定を確認したうえで検討することをおすすめします。

よくある不安・Q&A

Q. 休職代行を使うのは違法ではないですか?

休職代行そのものが違法というわけではありません。問題になりうるのは、弁護士でない業者が会社との交渉に踏み込む場合です。意思を伝えるだけなら民間業者でも行えますが、交渉が必要になりそうな場合は、労働組合か弁護士が運営するサービスを選ぶほうが安全です。

Q. 会社が休職を認めなかったらどうなりますか?

就業規則に休職制度がなかったり、会社が正当な理由なく認めなかったりするケースも考えられます。医師の診断書がある場合は、会社の安全配慮義務が問題になる可能性もありますが、具体的な対応は状況によって変わります。交渉が必要になりそうな場合は、最初から労働組合か弁護士が運営するサービスを選んでおくと、いざというときに動きやすくなります。

Q. 休職代行を使ったら、診断書は出さなくていいですか?

休職を認めるかどうかを判断するために、会社が医師の診断書を求めるのは一般的です。正当な理由なく診断書を出さずに休み続けると、無断欠勤として扱われるおそれもあると指摘されています。休職代行を使う場合も、受診して診断書を用意しておくことが前提になります。私自身、自分から休職を言い出せなかったときに、会社に伝えられたのは診断書があったからでした。受診は、休職代行を使うかどうかに関係なく、最初の一歩になります。

Q. 公務員でも休職代行は使えますか?

産経新聞の報道では、公務員からの依頼が目立つとされています。ただし公務員の休暇・休職の制度は、病気休暇(原則90日)と病気休職という、民間とは違う仕組みです。その仕組みに対応しているサービスかどうか、事前に確認したほうがよいでしょう。

Q. 休職代行と退職代行、どちらを選べばいいですか?

「まだ辞めるかどうか決めきれない」「いったん離れて考え直したい」のであれば休職、「もう戻るつもりがない」のであれば退職、というのが基本的な考え方です。ただし、休職したからといって、元気に復職できるとは限りません。私のように、休職中に迷った末に退職を選ぶ人もいます。

関連記事:退職代行、失敗しない選び方|料金と運営元で比較

まとめ。まずは「言い出せない」自分を責めないでください

休職代行は、辞める・辞めないを今すぐ決めなくていい、という点で、退職代行とは違う役割を持つサービスです。心身が限界に近いときほど、自分で言い出す余力は残っていないものです。それは甘えでも弱さでもなく、それだけ追い詰められているというサインだと思います。

もし今、体や心がかなりしんどい状態にあるなら、休職代行を調べる前に、まず医療機関を受診してください。「こころの耳」(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)や、お住まいの地域の総合労働相談コーナーなど、相談できる窓口もあります。そこから、休職という選択肢が現実的に見えてくることもあります。

そして、どうしても今の会社に残れない、辞めることをすでに決めているという場合は、無理に自分で伝えようとせず、信頼できる退職代行を頼るのも一つの手です。

関連記事:「死ぬくらいなら辞めろ」は簡単だけど動けない|パワハラで気力ゼロの人が今日からできる現実的な逃げ方

焦らなくて大丈夫です。辞めるか、休むか、どちらを選ぶにしても、まずは一歩、誰かに話してみることから始めてみてください。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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