「辞めたい」と思っているのに、なかなか言い出せない。
そんな自分を、甘えだと感じたことはありませんか。私は7回転職してきましたが、「今日こそ辞めると言おう」と決めていたのに、結局言えずに出社した朝が何度もありました。
同じように感じている人は、データで見ても少数派ではありません。退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスが、2026年10月20日に公表した累計利用者51,935名分のデータには、「自分で上司に言えなかった人」の実態や、「待遇が良くなっても続けようと思えなかった人」の本音が、具体的な数字として出ています。
この記事では、そのデータをもとに、あなたが「言えない自分」を責めなくていい理由と、どうしても言えない時に取れる選択肢を整理していきます。
退職代行5万人データとは何か
株式会社アルバトロス(本社・神奈川県横浜市)が、サービスを始めた2022年3月15日から2026年9月30日までの利用者51,935名分のデータを集計し、2026年10月20日にプレスリリースとして公表したものです。
もともと「自分では言えなかった」「職場に不満があった」という傾向が強い人たちのデータだと考えられ、退職代行を使わずに自分で辞めた人のデータは含まれていません。また、項目によって集計した期間や人数が違います。
なお、この運営会社では、前社長らが弁護士法違反で有罪判決を受けた事件がありました(2026年4月から新しい代表のもとで受付を再開しています)。ここでは、公表されたデータの中身だけを取り上げます。
その前提のうえで、それでも「自分一人ではない」と感じられる材料として、このデータには意味があると私は思っています。
自分で上司に言えた人は、約1割だった
このデータの中でもとくに目を引くのが、「退職代行を使う前に、自分で退職の意思を伝えたかどうか」を聞いた項目です。
2025年7月15日から2026年9月30日までの利用者726名の回答では、次のような結果になっています。
- 自分で伝えた:190名(26.2%)
- 伝えていない:536名(73.8%)
約4人に3人は、退職代行を使う前に、自分では伝えられていなかったということです。
さらに、「伝えた」と答えた190名に、誰に伝えたか(複数回答)を聞いた内訳を見ると、次のようになっています。
- 同僚:101件(53.2%)
- 上司:85件(44.7%)
- 人事・総務:21件(11.1%)
「伝えた」と答えた人の中でも、上司に直接言えた人は半数に届いていません。上司に伝えた85名は、回答した726名全体で見ると11.7%で、プレスリリースでも「回答者全体の約1割」とされています。
退職代行を使った人のうち、自分の口で上司に退職を伝えられた人は、10人に1人程度だったということです。
また、利用の経緯(複数回答)を見ると、51,935名のうち10.8%(5,613名)が「上司から退職を止められる」を挙げていました。退職を言い出す相手として、上司がいかにハードルの高い存在になっているかが、この2つの数字からも見えてきます。
言えなかったのは、あなたの気の弱さのせいではありません。多くの人が、同じ壁の前で立ち止まっていたということです。
なぜ上司には言えないのか
同僚には言えても、上司には言えない。このギャップには、理由があると思います。
上司は、評価や今後の立場を握っている相手です。「辞めます」と言った瞬間に、関係が変わってしまうかもしれない。引き止められて、断り切れないかもしれない。そうした不安が、言葉を飲み込ませるのだと思います。
私自身も、「今日こそ言おう」と決めていたのに言えずに出社した朝が、何度もありました。言い出しても、結局言いくるめられてしまうんじゃないか。そんな不安が、いつもありました。
これは特別なことではなく、多くの人に共通する反応なのだと、このデータを見て改めて思います。
関連記事:しつこい引き止めの断り方
「待遇が良くなっても続けない」が9割を超えていた
このデータの中で、私がもう一つ重要だと感じたのが、「人事異動や待遇改善などがあれば、勤務を続けようと思えたか」という項目です(回答数786件)。
- 思えなかった:724件(92.1%)
- 思えた:62件(7.9%)
9割を超える人が、「改善の話があったとしても、続けようとは思えなかった」と答えています。
望む改善点としては、「社員同士のコミュニケーションや意見を言い合える風通しの良い職場」「人間関係と賃金の改善」「業務の十分な引き継ぎ」といった声が挙がっていました。お金や役職の話だけでは埋まらない部分があるということだと思います。
私も不動産営業をしていた頃、辞めたい理由はお金の問題ではありませんでした。仮にあのとき、会社から待遇を良くすると引き止められていたとしても、辞めていたと思います。そもそも、そういう話を信じられる相手ではありませんでした。
一度「この環境では無理だ」と心が決まったとき、条件を少し変えるくらいでは、その気持ちは動かないことが多いのかもしれません。もしあなたが今、引き止めの言葉を想像して迷っているなら、このデータは一つの参考になるはずです。
半年未満で退職代行を使う人は少なくない
もう一つ、気になる人が多いであろうデータにも触れておきます。「どのくらいの勤続期間で退職代行に行き着くのか」という点です。
51,935名の在職期間を見ると、最も多かったのは「1ヶ月〜6ヶ月」の18,615名(35.8%)でした。3人に1人以上が、入社から半年以内に退職代行を使っていたことになります。
「入社してすぐなのに辞めるなんて、自分だけがおかしいんじゃないか」と感じている人もいると思いますが、少なくともこのデータを見る限り、早い段階で辞めることを考える人は決して少数派ではありません。
重い退職理由を一人で抱えていないか
退職代行を使った経緯(複数回答、51,935名、延べ69,256件)で多かったのは、次のような項目です。
- 人間関係や職場環境・雰囲気に問題がある:9,771名(18.8%)
- 会社に非はなく、自己都合:8,950名(17.2%)
- 上司から各種ハラスメントを受けている:7,351名(14.2%)
- 上司から退職を止められる:5,613名(10.8%)
2位が「会社に非はなく、自己都合」だったように、退職代行を使う理由は、職場の問題だけではありません。一方で、約5人に1人が人間関係や職場の雰囲気を、7人に1人がハラスメントを挙げています。これらは、「もう少し頑張れば変わるかもしれない」と自分を追い込んで耐えてしまいやすい理由でもあります。
もし今、あなたが抱えている理由がこれに近いものなら、まず大事にしてほしいのは、辞め方を工夫することより先に、自分の心と体を守ることです。限界を感じているなら、無理に出社を続ける前に、医療機関やこころの耳(厚生労働省の相談窓口)、お住まいの地域の総合労働相談コーナーといった相談先に一度つながってみてください。
どうしても自分では言えない時の選択肢
ここまで見てきたように、「自分では言えなかった」人は決して珍しくありません。それでも、退職の意思は何らかの形で会社に伝える必要があります。
自分で言うのがどうしても難しい場合、退職代行という選択肢があります。ただし、どの業者でもいいわけではありません。民間企業が運営する退職代行が、会社との交渉(有給消化や退職日の調整など)まで行うと、弁護士法に触れるおそれがあります。安心して任せられるのは、弁護士が運営しているか、労働組合が運営しているサービスです。
料金や対応範囲はサービスによって差があります。選ぶ際のポイントは、こちらの記事で詳しく整理しています。
退職代行を使うことは、逃げでも甘えでもありません。今回のデータが示すとおり、同じように「言えなかった」人が、何万人も同じ道を選んできたということです。
よくある不安・Q&A
Q. 自分で言えなかったのは、根性がないということですか。
そうは思いません。このデータでは、726名中536名(73.8%)が、退職代行を使う前に自分では伝えていませんでした。言えなかった人のほうが多かったということです。相手が上司であればなおさら、言い出しにくいのは自然な反応だと思います。
Q. 退職を伝えたら、待遇改善を提案されそうで迷っています。
このデータでは、人事異動や待遇改善があっても「続けようと思えなかった」人が92.1%にのぼっています。条件面の提案だけでは解決しない不満を抱えているなら、一度落ち着いて「何が変われば本当に続けられるのか」を自分に聞いてみるのも一つの方法です。
Q. 入社してまだ半年も経っていないのに、辞めてもいいのでしょうか。
このデータでは、入社から1ヶ月〜6ヶ月で依頼した人が全体の35.8%と最も多くなっています。早い段階で辞めることを考えること自体は、珍しいことではありません。
まとめ:言えない自分を責めなくていい
5万人を超えるデータは、「自分で言えなかった」人も、「待遇が良くなっても続けようと思えなかった」人も、決して少数ではないことを示していました。
上司に自分で退職を伝えられた人は約1割。待遇改善があっても続けようと思えなかった人は9割を超える。これは、あなたが特別に弱いからではなく、多くの人が同じ場所でつまずいてきたことの表れだと思います。
もし今、あなたが「言えない自分」を責めているなら、まずその気持ちを少し横に置いてみてください。そのうえで、自分で伝える方法を探すのか、誰かの力を借りるのか。一歩ずつ、自分のペースで決めていけば大丈夫です。
この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。
