退職代行後に上司が家に来たら?|警察・代行への連絡と対応

退職代行を使ったあと上司が自宅に来ることを不安に思う人に向けた、法律の整理と来てしまったときの対応の解説

退職代行を使って会社を辞めようと決めたあと、ふと頭をよぎる不安があります。「もし上司がいきなり家まで来たらどうしよう」というものです。

私自身は、退職代行を使ったことがありません。この記事は体験談ではなく、公表されている事例や法律、退職代行の仕組みをもとに、できる限り正確にまとめたものです。

この記事で分かることは、上司が家に来る可能性とその理由、実際に話題になった事例、法律上どう整理されるか、そして来てしまったときに今すぐできる対応です。

目次

なぜ「上司が家に来るかもしれない」と不安になるのか

退職代行を使うと決めた時点で、多くの人は「もう会社と直接話さなくていい」とほっとします。それでも心のどこかで「本当にこれで終わるのだろうか」という不安が残るのは、自然なことです。

家に来る理由としてよく挙げられているのは、電話がつながらないこと、貸与品や私物の受け渡しが済んでいないこと、そして引き止めたい、辞めた理由を直接聞きたいという会社側の気持ちです。

「ほとんどのケースで家に来ることはない」とする記事は複数あります。ただし、これは退職代行業者やメディアの見解で、どれくらいの人が訪問されたかという公的な統計があるわけではありません。来ないケースのほうが多いと考えられますが、「来ない」とは言い切れない、というのが正確なところです。

とくに社宅や寮に住んでいる場合は、会社が住所を把握していて、鍵の管理にも関わっていることがあるため、訪問のハードルが低くなりやすいという指摘もあります。

実際に話題になった事例:2026年7月、SNSで拡散したケース

2026年7月、退職代行を使って会社を辞めようとした男性の社宅で、玄関のドアが開けられたという出来事がSNSで拡散しました。

本人の投稿によると、退職代行に依頼した日の夜、会社関係者が合鍵で玄関を開けようとし、その後、救急隊などが来てドアが開けられたとされています。会社が消防や警察を呼んだのではないか、という形で広く伝えられました。

ここで注意しておきたいのは、この件の一次情報は本人の投稿で、会社側の公式な発表や、大手報道機関による裏付けは確認できていないということです。誰がどこに通報したのかも、はっきりしていません。「こういうことが実際に話題になった」という事実として受け止めつつ、細部まで鵜呑みにするのは避けたほうがよいと思います。

仮に、事実ではない内容で消防や警察を呼んだのだとすれば、後で触れる偽計業務妨害罪や軽犯罪法に触れる可能性もあります。ただ、このケースが法的にどう判断されたかは、執筆時点では分かっていません。

上司が家に来た場合、法律的にはどうなるのか

断定はできませんが、一般的に整理されている法律を紹介します。個別の状況については、最終的に弁護士や警察などに確認することをおすすめします。

住居侵入罪・不退去罪(刑法130条)

刑法130条は、正当な理由なく人の住居に侵入したり、退去を求められたのに応じなかったりした場合、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金に処すると定めています。「帰ってください」とはっきり伝えたのに家の中や敷地内に居座った場合、不退去罪にあたる可能性があります。

社宅の場合は、会社が建物の貸し主や管理者でもあるため、一般の賃貸住宅とは事情が変わる部分があります。とはいえ、住んでいる人の承諾なく部屋に入ってよいということにはならないと考えられます。どう判断されるかはケースによるので、気になる場合は弁護士に確認してください。

ストーカー規制法は、基本的に当てはまらない

「しつこく来るならストーカー規制法で対応できるのでは」と考える人もいますが、ストーカー規制法が対象とする「つきまとい等」は、恋愛感情やその感情が満たされなかったことへの恨みによるものに限られています。上司の訪問は通常、引き止めや安否確認が目的なので、原則として対象にはなりません。

迷惑防止条例の可能性

自治体によっては、恋愛感情を伴わない悪意の感情によるつきまといや待ち伏せ、住居への押しかけなどを規制している迷惑防止条例もあります。ただし「繰り返し行われたこと」が条件になっていることが多く、1回だけの訪問では当てはまりにくいと考えられます。内容や罰則はお住まいの自治体によって異なります。

虚偽の通報(偽計業務妨害罪・軽犯罪法)

刑法233条は、うその噂を流したり、人をだますような手段を使ったりして人の業務を妨害した場合、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処すると定めています。また、ありもしない犯罪や災害を公務員に申し出る行為は、軽犯罪法で禁止されています。これは「安否確認を名目に、うその通報をした」といった極端なケースに関わる話で、通常の訪問に当てはまるものではありません。

退職の自由(民法627条1項)

民法627条1項は、期間の定めのない雇用契約について、解約の申し入れから2週間が経てば雇用が終了すると定めています。会社の同意がなくても、申し入れてから2週間で契約は終わるということです。会社が家に来て説得しようとしても、それに応じる法的な義務はありません。

実際に来てしまったときの対応ステップ

もし本当に上司やその代理が家に来てしまった場合、落ち着いて次の順番で対応することをおすすめします。

  1. ドアを開けない。居留守を使うこと自体は、何の違法行為でもありません。応答する義務もありません。
  2. やむを得ず対応するなら、帰ってほしいとはっきり伝える。「お話しすることはありません。お帰りください」と伝えます。それでも居座るようなら、不退去罪にあたる可能性が出てきます。
  3. 日時・言動を記録する。インターホンの録画、会話のメモ、できればスマートフォンでの録音。後で必要になったときの証拠になります。
  4. 退職代行に連絡する。会社に改めて「本人に直接連絡しないでほしい」と申し入れてもらえる場合があります。
  5. 身の危険を感じたら、迷わず110番する。緊急ではないけれど不安で相談したい、という場合は、警察の相談専用電話「#9110」も使えます。

退職代行の「会社から直接連絡しないで」は、どこまで効くのか

退職代行に依頼すると、「本人へ直接連絡しないでください」と会社に申し入れてもらえます。ただし、これには法的な強制力はありません。会社が必要と判断すれば、本人に連絡すること自体はできてしまいます。この点は、利用前に理解しておいたほうがよいところです。

ここで、運営元による違いが関わってきます。

  • 民間業者:退職の意思を伝える「使者」としての役割にとどまります。有給消化や退職日の調整といった交渉は法律事務にあたる可能性が高く、弁護士ではない業者が行うと非弁行為にあたるおそれがあります。
  • 労働組合:憲法28条で保障された団体交渉権にもとづき、会社と交渉することができます。有給消化や退職日の調整なども、交渉として進められます。
  • 弁護士:代理人として会社とやり取りでき、未払い賃金の請求や、トラブルになった場合の対応まで含めて依頼できます。

関連記事:大手退職代行業者の弁護士法違反事件でわかった落とし穴|弁護士・労組・民間の違いと安全な選び方

会社に「本人や家族に直接連絡しないでほしい」と電話や書面で申し入れる対応をとっている業者もあります。それでも、まれに連絡してくる会社があることは業者側も案内していて、「頼めば絶対に来ない」とは言い切れないのが実情です。訪問や嫌がらせが続くような場合は、法的な対応まで任せられる弁護士が運営するサービスを選んでおくと安心です。

料金の目安として、帝国データバンクの調査(2025年10月)では、退職代行サービスの平均料金は約2.9万円で、民間経営は約2.25万円、弁護士法人は約4.47万円でした。弁護士に未払い賃金の請求なども頼む場合は、回収できた額に応じた報酬が別にかかることもあります。申し込む前に、最新の料金を確認してください。

関連記事:退職代行、失敗しない選び方|料金と運営元で比較

動き出す前にできる、訪問リスクを減らす準備

「辞めたい」と思ったその日に退職代行へ依頼する人も多いと思いますが、少しだけ時間が取れるなら、事前にやっておくと安心なことがあります。

  • 会社からの貸与品(パソコン、制服、社員証、鍵など)を整理しておく。これが訪問の理由になりやすいためです。郵送で返せるかどうかも、依頼するときに伝えておきます。
  • 私物を事前に持ち帰っておく。出社しづらい状況なら、郵送で送ってもらえるか、依頼前に確認しておきます。
  • 住まいが社宅か、個人名義の賃貸か、持ち家かを把握しておく。社宅の場合は退去の時期や鍵の扱いが問題になりやすいため、依頼する業者にも伝えておくとよいです。
  • 離職票などの書類の受け取り方を決めておく。郵送で送ってもらうよう、退職代行を通して伝えておくと、受け取りのために会うきっかけを減らせます。

関連記事:離職票が届かない・退職書類が来ないときの対処法

こうした準備は、訪問を必ず防げるものではありませんが、訪問の理由になりやすい要素を減らしておくことにはつながります。

よくある不安・Q&A

Q. 居留守を使うのは違法ではありませんか?

違法ではありません。ドアを開けずに応答しないこと自体は、何の問題もありません。会社から連絡が必要な用件があれば、退職代行を通して伝えてもらえば十分です。

Q. 家族が対応してしまったら、どうなりますか?

家族には対応する義務はありません。「退職代行を通してやり取りしています」と伝えるだけで十分です。負担が大きいようなら、事前に家族へも退職代行を使う予定であることを伝えておくと安心です。

Q. ちょっと来られただけで警察に相談してもいいのでしょうか?

構いません。実際に犯罪が成立するかどうかは別として、「怖い」「不安だ」という気持ちは、警察に相談する十分な理由になります。緊急でなければ「#9110」に相談し、身の危険を感じたら110番してください。相談したことが記録として残ることにも意味があります。

Q. 退職代行を使わずにバックレたほうが、家に来られにくいですか?

むしろ逆になりやすいと考えられます。何の連絡もなく出社しなくなると、会社は安否確認のために家族や自宅に連絡しようとすることがあります。退職の意思だけでも伝わっていれば、その理由は少なくなります。

関連記事:仕事をバックレるとどうなる?退職代行とのリスク比較

上司が家に来たとき、警察に相談するかの目安

退職代行を使った後に上司が家に来るのは、会社として安否を確かめたいという理由のこともあります。来たこと自体が、すぐに法律の問題になるとは限りません。

ただ、来られる側にとっては、それだけで怖いものですよね。無理にドアを開けて話す必要はありません。インターホン越しに「退職のことは代行先を通してください」と伝えて、代行先にも、上司が来たことをすぐに知らせてください。

警察に相談するかの目安

次のようなときは、一人で抱えずに警察へ相談することを考えてください。

  • 帰ってほしいと伝えても、家の前や敷地から離れない
  • 大声を出す、ドアを何度もたたくなど、怖いと感じる行動がある
  • 何度も繰り返し来る
  • 身の危険を感じる

家の人から帰るように求められても立ち去らない場合は、刑法の不退去罪(第130条)にあたる可能性があります。ただ、実際にあたるかどうかは状況によって判断されるので、自分で決めつけず、警察に事情を話してみてください。

  • 今まさに危険を感じているとき:110番
  • 緊急ではないけれど不安なとき:警察相談専用電話「#9110」(発信した地域の警察の相談窓口につながります。受付時間は地域によって違うので、お住まいの都道府県警察の案内を確認してください)

相談するときのために、来た日時、回数、言われたことをメモしておくと役立ちます。インターホンに録画機能があれば、その記録も残しておいてください。

法律面で不安なときは、弁護士に相談する

「家に来られるのは違法じゃないの?」「辞めるなら損害賠償だと言われた」。こうした法律が関わる不安は、一般論だけでは判断できないことが多いです。自分の場合どうなるのかは、労働問題に詳しい弁護士に相談すると安心です。

退職の手続きと一緒に任せたいなら、会社との交渉までできる弁護士運営の退職代行を選ぶという方法もあります。

関連記事:退職代行、失敗しない選び方

関連記事:「辞めたら損害賠償する」と脅されたとき

まとめ:不安をゼロにはできなくても、備えることはできる

上司が家に来るかどうかは、会社によって差があり、どれくらいの確率で起きるかが分かっているわけではありません。それでも、法律上の整理や実際に話題になった事例を知っておくことで、いざというときに慌てずに動けるようになります。

退職代行を使うこと自体は、特別なことでも後ろめたいことでもありません。「もし家に来られたら」という不安をゼロにすることは誰にもできませんが、来てしまったときの対応の流れをあらかじめ知っておくだけで、いざというときの落ち着き方は変わってきます。

もし今、退職代行を使うこと自体にまだ迷いがあるなら、焦って決める必要はありません。心身がつらい状態なら、まずは休むこと、信頼できる人や公的な窓口に相談することも、立派な選択肢のひとつです。今日からできる小さな準備を一つずつ済ませながら、自分のペースで進めてください。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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