管理職は罰ゲーム?なりたくない・辞めたい人の判断基準

管理職になりたくない・辞めたいと感じたときの判断基準を調査データとともに解説する記事
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「管理職になりたくない」は、わがままじゃありません

上司から「そろそろ管理職どう?」と声をかけられたとき、素直に喜べなかった。そんな自分を責めていませんか。

私も昇進の話をもらったことがあります。でも、受けませんでした。理由は単純です。管理職になると残業代がつかなくなるのに、責任だけは重くなる。割に合わないと分かっていたからです。

せっかく声をかけてくれた上司に申し訳ない気持ちはありました。期待に応えられなかった後ろめたさもありました。それでも、断るという選択を後悔したことはありません。

この記事では、「管理職は罰ゲーム」と言われる背景にある調査データと、昇進を断っていいのかどうかの判断基準、そしてすでに管理職になって辞めたいと感じている人の次の一手を整理します。

なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったのか

「罰ゲーム」という言葉が広く知られるようになった一因に、パーソル総合研究所の小林祐児氏が2024年2月に出した書籍『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(集英社インターナショナル)があります。この本では、管理職の負担が増え続ける一方で、権限や報酬といった見返りが追いついていない構造が、データをもとに指摘されています。

この指摘を裏づけるような調査結果が、いくつも出ています。

日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が2023年4月に行った調査(管理職1,072名・一般社員1,116名が対象)では、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と回答しました。2018年の72.8%から、5年間で4.5ポイント増えています。なりたくない理由で最も多かったのは「自分は管理職に向いていないから」で、なりたくない人の53.0%でした。

一方で、すでに管理職になっている人の56.4%は、管理職という仕事を前向きに捉えているという結果も出ています。つまり「なってみたら案外悪くない」という声もある、ということです。この両面を知っておくことには意味があります。

パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査」の2026年版では、今の勤務先で「管理職になりたい」と答えた正社員は17%でした。調査を始めた2018年以降で最も低い水準です。

国際比較を見ると、日本の状況の特殊さがよく分かります。パーソル総合研究所が2019年に行った「APAC就業実態・成長意識調査」(14の国・地域が対象)では、非管理職のうち「管理職になりたい」人の割合は日本が21.4%で、14の国・地域で最も低い結果でした。2022年の「グローバル就業実態・成長意識調査」(18の国・地域が対象)でも、今の勤務先で管理職になりたい人の割合は日本が19.8%で最下位、最も高いインドは90.5%でした。調査の対象国や年は違いますが、どちらも「日本は管理職になりたい人が特に少ない」という傾向は同じです。

今の管理職が、現場の仕事をどれだけ兼ねているかという点も見逃せません。産業能率大学総合研究所が2019年に行った調査では、上場企業の課長の98.5%が、プレイヤーとしての仕事も兼ねていました。59.0%の課長が「プレイヤーの仕事がマネジメントに支障をきたしている」と答え、37.4%が「期待に応えるのに十分な権限を与えられていない」と感じていました。同じ年の部長を対象にした調査でも、95.8%がプレイヤーとの兼務でした。

こうした数字を並べると分かるのは、「管理職になりたくない」と感じるのは、あなたの能力や根性の問題ではないということです。負担が増える一方で、見返りが追いついていない。これは個人の問題というより、組織の構造の問題として語られ始めています。

昇進の打診、断ってもいいのか

私が声をかけてもらったのは、転職を重ねてきたうちのある職場でのことでした。上司は期待してくれていたと思います。それでも私は断りました。

理由は、冒頭でも触れたとおりです。管理職になると、多くの会社でいわゆる「管理監督者」として扱われ、残業代の対象から外れます。そのぶん役職手当がつくことが多いですが、増える責任や業務量に見合っているかは会社によって大きく違います。責任は重くなるのに、見返りが目に見えて増えない。そう感じたから、断るという決断をしました。

断った後、申し訳なさがなかったと言えば嘘になります。せっかく推薦してくれた上司の顔が浮かんで、気まずさもありました。それでも、断ったことで自分の時間と働き方を守れたという実感の方が、後になって強く残っています。

昇進の打診を受けるかどうか迷ったとき、次のような軸で考えてみると整理しやすくなります。

  • 負荷と見返りのバランス:増える業務量・責任に対して、権限や裁量、報酬はどれだけ増えるか
  • プレイヤー業務との兼務の度合い:マネジメントに専念できるのか、現場の仕事も抱えたままなのか
  • 会社の支援体制:役割分担や研修、相談先が整っている会社かどうか
  • 自分のキャリアの方向性:管理職ルートを望んでいるのか、専門職として力をつけたいのか

会社によっては、この構造そのものを見直す動きも出てきています。たとえば日揮グループの日揮グローバルでは、部長代行のポストを廃止し、人材育成やキャリア開発を担うCDM(キャリアデベロップメントマネージャー)と、プロジェクトの管理や人員配置を担うPCM(プロジェクトコーディネーションマネージャー)を、主要な約30の組織に置きました。1人の部長がすべてを背負う形から、役割を分ける形へと変えた例です。こうした動きがある会社なら、昇進の負担感は以前とは違うかもしれません。

逆に言えば、役割が整理されないまま「とりあえず課長をやってほしい」という形で打診されている場合は、慎重に考えた方がいい場面もあります。昇進を断ること自体は、逃げでも裏切りでもありません。見返りに見合うかどうかを自分なりに見極めた結果の選択です。

すでに管理職になって辞めたいと感じている人へ

打診を受けて管理職になったものの、辞めたいと感じている人もいると思います。先ほどの調査のとおり、管理職になってもプレイヤーの仕事から解放されないケースは珍しくありません。上と下の板挟みになりやすいことも、負担感を強める理由としてよく語られます。

健康面への影響についても触れておきます。東京大学などが参加した国際共同研究(2019年発表)では、日本と韓国では、管理職・専門職の男性の死亡率が、他の職業の人より高い傾向が見られたと報告されています。これは職業ごとの死亡率を比べた研究で、「管理職になると健康を害する」と単純に言えるものではありません。ただ、負荷の高さが健康に影響しうるという指摘として、知っておく価値はあります。

もし今、心身の限界を感じているなら、辞め方を考えるより先に、まず休む・誰かに相談することを優先してください。会社の産業医、こころの耳(厚生労働省)、お住まいの地域の総合労働相談コーナーなど、話を聞いてもらえる窓口はあります。

落ち着いて考えられる状態であれば、選択肢はいくつかあります。社内での役割変更や降格の希望を出すこと、専門職ルートへの転換を相談すること、そして今の会社の外に目を向けることです。

それでも辞めたいと思ったら、次の一歩

管理職という役割そのものが自分に合っていないと感じるなら、今の会社の中だけで解決しようとしなくても構いません。管理職の負担の構造は会社ごとに大きく違います。今の職場では罰ゲームのように感じていたことが、別の会社や別の役割では当たり前に報われることもあります。

私自身、7回の転職の中で、合わない環境に無理に合わせるのをやめたことが、働き方を変える転機になりました。今の会社でずっと我慢し続けることだけが選択肢ではありません。

管理職としての経験やマネジメントのスキルは、転職市場でも評価される要素です。在職中に動くなら、会社に知られずに進める工夫も知っておくと安心です。求人の探し方や経験の伝え方は、転職エージェントに一度相談してみるのも一つの手です。

関連記事:在職中の転職活動が会社にバレない進め方|今日からできる具体策

関連記事:未経験から30代で転職した実体験|やってよかった準備とつまずき

どうしても自分の口から「辞めたい」と言い出せない状況になってしまった場合は、退職代行という選択肢もあります。利用する場合は、弁護士が運営しているか、労働組合が運営しているサービスを選ぶことをおすすめします。

関連記事:退職代行、失敗しない選び方|料金と運営元で比較

よくある不安・Q&A

Q. 昇進を断ると、出世コースから外れてしまいますか?

会社や上司の考え方によって差があります。一度断ったからといって、その後の評価がすべて下がるとは限りません。ただ、会社によっては再度声がかかりにくくなることもあります。断る際は、理由を感情的にではなく、業務量や役割についての話として伝えると、関係が変わりにくいと感じています。

Q. 自分の会社が「名ばかり管理職」かどうか、どう見分ければいいですか?

肩書きが「課長」「マネージャー」であっても、実際には経営方針の決定に関わる裁量がなく、出退勤の自由もなく、部下と同じような業務をこなしているだけという場合、残業代の対象から外れる「管理監督者」には当たらない可能性があります。個別の状況によって判断が変わるため、心当たりがある場合は、労働局の総合労働相談コーナーや弁護士に実態を確認してもらうことをおすすめします。

Q. 管理職のまま辞めるとき、引き継ぎで迷惑をかけないか心配です。

責任ある立場であるほど、引き継ぎを気にする気持ちはよく分かります。ただ、引き継ぎ資料を整えることと、無理に長く在籍し続けることは別の話です。できる範囲の引き継ぎを済ませたら、あとは会社の責任で進めてもらって構いません。

関連記事:引き継ぎ、完璧じゃなくていい

まとめ

「管理職は罰ゲームだ」という言葉が広く語られるようになったのは、あなただけが特別につらいわけではない、ということでもあります。調査データが示しているのは、負担が増え続ける一方で、権限や報酬といった見返りが追いついていないという構造の問題です。だからこそ、昇進の打診を断ることも、管理職になった後で「向いていない」「辞めたい」と感じることも、おかしなことではありません。

大事なのは、「管理職を続けるかどうか」を、見返りと負荷のバランスで一度冷静に見直してみることだと思います。今の会社の中で役割を変えてもらう道もあれば、管理職としての経験を持って、別の会社や別の働き方に移る道もあります。どちらが正しいということはありません。

もし今、心身がすり減っていると感じているなら、辞め方や次のキャリアを考えるのは、少し休んでからで大丈夫です。まずは誰かに今の状況を話してみることから、始めてみてください。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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