次の仕事が決まる前に辞めてもいい?貯金の目安と辞める前のお金の準備

次の仕事が決まる前に辞めたい人に向けた、生活費の目安と退職後のお金の制度の解説

「次が決まってから辞めなさい」。誰かにそう言われて、余計に苦しくなったことはありませんか。

私は約3年前、前の職場を辞めたとき、次の仕事は決まっていませんでした。体調を崩して休職し、続けるか辞めるか迷った末の退職でした。失業保険を受け取れたのは2〜3か月ほどで、給付が終わってからは日雇いの仕事で食いつなぎました。

この記事では、「次が決まっていないのに辞めたい」と悩むあなたに向けて、生活費の目安、辞める前に済ませておきたいこと、そして失業保険や住民税、健康保険といったお金の制度がどう動くのかを、できるだけ具体的にまとめます。先にお伝えしておくと、次が決まる前に辞めるのは、思っているほど珍しい選択ではありません。

目次

次が決まる前に辞めるのは、本当に無謀なことなのか

まず知っておいてほしいデータがあります。

リクルートの「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」(20〜59歳の正社員・正職員7,804人が対象)では、転職経験者のうち、どの年代も約4割が「前の勤務先を退職した後に、現在の勤務先が決まった」と答えています。次を決めずに辞める人は、決して少数派ではないということです。

同じ調査では、転職活動を始めてから入社するまでの期間も比べています。「退職した後に、現在の勤務先が決まった」人は平均3.8か月、「現在の勤務先が決まってから退職した」人は平均4.0か月で、大きな差はありませんでした。先に辞めたからといって、転職までに特別時間がかかるとは限らない、ということです。

とはいえ、「辞めていいか」の前に、「辞められるか」という法律上の話も気になるところだと思います。期間の定めのない雇用契約、つまり一般的な正社員であれば、民法627条1項により、退職を申し入れてから2週間が経てば雇用契約は終わるとされています。

就業規則で「1か月前までに申し出ること」と定めている会社も多くあります。法律上は原則として民法が優先されると考えられていますが、円満に辞めたいなら、就業規則に沿って早めに伝えておく方が話はこじれにくいでしょう。不安があるときは、労働局の総合労働相談コーナーで確認できます。

貯金はいくら必要か。生活費の目安

「生活費の3〜6か月分の貯金があれば大丈夫」という話を、ネットで見たことがあるかもしれません。ただ、これは公的機関が定めた基準ではなく、あくまで広く言われている目安です。

総務省の「家計調査(家計収支編)」の2024年平均によると、単身世帯の1か月あたりの消費支出は16万9,547円でした。34歳以下に限ると17万6,160円です。住む場所によっても差があり、大都市では18万183円、小都市・町村では15万6,907円となっています。

これはあくまで平均値です。家賃の水準や持ち家かどうか、実家に戻れるかどうかで、必要な金額は大きく変わります。家賃・食費・通信費・保険料など、まずは自分の固定費を一度書き出してみることをおすすめします。

そのうえで、次の章以降で触れる「失業保険が振り込まれるまでの空白期間」と「退職後に届く住民税や保険料」の分も見込んでおくと、より現実に近い数字になります。

私自身は、失業保険の給付が終わったあと、日雇いの仕事で生活費をつなぎました。給付には期限があること、そしてその先の収入をどうするかまで考えておくことは、実際に経験してみて大事だと感じた部分です。

関連記事:複数回転職して分かった「辞めた後」のリアル|お金・後悔・次の動き

辞める前に済ませておきたいこと

次が決まらないまま辞めると決めたなら、在職中に済ませておいた方がいいことがいくつかあります。退職後は収入の証明が難しくなり、通りにくくなる手続きがあるからです。

クレジットカードの新規申込は、在職中に済ませておくと安心です。収入がない状態では、一般に審査が通りにくくなります。

引っ越しの予定がある場合も同様です。賃貸契約の審査では、安定した収入があるかどうかが見られることが多く、退職後に部屋を探すとハードルが上がることがあります。

心身の不調で働けない状態なら、傷病手当金を確認することも大切です。傷病手当金は健康保険の制度で、病気やけがで働けず給料が出ないときに、生活を支えるためのお金が支給されます。退職日までに継続して1年以上加入していて、退職日に傷病手当金を受けている(または受けられる状態にある)などの条件を満たせば、退職後も受け取り続けられる場合があります。

私自身、前職を辞める前は、休職して傷病手当金を受け取りながら、休職を続けるか辞めるかを迷いました。退職日を決める前に、退職後も受け取り続けるための条件を、健康保険組合に何度も電話で確認しています。条件は細かく、退職日の過ごし方ひとつで受け取れなくなることもあるので、該当しそうな場合は、辞める前に加入している健康保険組合や協会けんぽに確認してください。

なお、失業保険は「働ける状態」であることが前提の制度なので、病気で働けない間は受け取れません。すぐに働けない場合は、失業保険の受給期間を延長する手続きもあります。

失業保険はいつから、いくらもらえるのか

自己都合で辞めた場合、失業保険(雇用保険の基本手当)はすぐにもらえるわけではありません。ここを誤解していると、生活費の見積もりが大きく狂います。

まず受給の基本的な条件は、離職前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることです。倒産・解雇などの「特定受給資格者」や、病気など正当な理由のある自己都合退職にあたる「特定理由離職者」の場合は、離職前の1年間に6か月以上あれば条件を満たします。

ハローワークで手続きをしてから7日間は、どのケースでも給付がない「待期期間」です。

そのうえで、自己都合退職の場合は「給付制限期間」がかかります。2025年4月1日からは、この給付制限が原則2か月から原則1か月に短くなりました。ただし、過去5年以内に自己都合退職を3回以上している場合は、3か月の給付制限がかかります。また、離職前1年以内や離職後に、自分で教育訓練を受けた場合などは、給付制限が解除される仕組みもできました。

給付制限が明けたあとも、4週間ごとの「失業認定日」に求職活動の実績を報告して、はじめて振り込まれます。初めて自己都合で辞める場合でも、手続きから最初の振込までは、1か月半から2か月ほどかかると考えておくと安心です。

もらえる金額は、離職前6か月の賃金をもとにした「賃金日額」のおよそ5〜8割(60〜64歳は4.5〜8割)で、上限額があります。自己都合退職の場合、給付される日数は雇用保険の加入期間に応じて90日から150日です。私自身も、給付制限がかかったうえで、受け取れたのは2〜3か月ほどでした。

関連記事:失業保険、いつからもらえる?

住民税・健康保険・年金、見落としがちな落とし穴

辞める時期によって、思わぬところで足をすくわれやすいのが住民税です。

住民税は前年の所得に対してかかる後払いの税金なので、退職してからも払う必要があります。1月から5月に退職する場合は、原則として5月分までの残りの住民税が、最後の給与や退職金からまとめて差し引かれます。6月から12月に退職する場合は、自分で納付書を使って納める「普通徴収」に切り替わるのが一般的です(希望すれば、残りを最後の給与からまとめて差し引いてもらえる場合もあります)。

普通徴収の納期は、多くの自治体で6月・8月・10月・翌年1月の年4回です。これを知らずに辞めると、収入がない時期に数万円単位の納付書が届いて焦る、ということが起こりえます。

関連記事:退職後の住民税が高すぎる|仕組みと払えないときの対処

健康保険の選択肢は、主に3つあります。それまでの会社の健康保険を任意継続する、国民健康保険に加入する、家族の扶養に入る、のいずれかです。

任意継続は、退職日までに継続して2か月以上加入していること、退職後20日以内に申し出ることが条件で、加入できるのは最長2年間です。保険料は全額自己負担になりますが、計算のもとになる報酬に上限があるため、国民健康保険より安くなる場合があります。国民健康保険は前年の所得をもとに保険料が決まるので、退職して収入が下がった翌年度は安くなる傾向があります。どちらが得かは人によって違うので、両方の保険料を試算してから選んでください。

関連記事:退職後の健康保険、任意継続と国保どっちが得?

年金も、会社員の厚生年金から、自分で納める国民年金に切り替える手続きが必要です。収入が減って払うのが難しいときは、失業による特例で免除や猶予を受けられる場合があります。払えないまま放っておかず、市区町村の窓口に相談してください。

関連記事:国民年金が払えないときの免除・猶予申請|失業後の現実的な動き方

どうしても自分の口から言えない時の選択肢

ここまでお金の制度について書いてきましたが、そもそも「辞めたい」と言い出すこと自体が怖い、という方もいると思います。私も、辞めると決めてから実際に伝えるまで、毎回時間がかかりました。

どうしても自分では言い出せない場合、退職代行という選択肢があります。ただし、運営元によってできることが大きく違う点は知っておいてください。

退職の意思を会社に伝えるだけなら、民間企業・労働組合・弁護士のどれが運営するサービスでも対応できます。一方で、退職日や有給消化の交渉、未払い賃金の請求といった「交渉」が必要になる場面は、労働組合か弁護士が運営するサービスでなければ対応できません。慰謝料の請求や訴訟まで考える場合は、弁護士に頼む必要があります。

料金の目安として、帝国データバンクの調査(2025年10月)では、退職代行サービスの平均料金は約2.9万円で、民間経営は約2.25万円、弁護士法人は約4.47万円でした。安さだけで選ぶと、いざという時に交渉してもらえず困ることもあるので、自分の状況に交渉が必要そうかどうかを、まず見極めることが大切です。

関連記事:退職代行、失敗しない選び方|料金と運営元で比較

よくある不安・Q&A

Q. 貯金がほとんどない状態でも辞めていいですか?

辞めてはいけない、ということはありませんが、リスクは大きくなります。まずは失業保険が振り込まれるまでの期間や、住民税・保険料の支払いのタイミングを確認し、どのくらいの期間を乗り切る必要があるかを具体的に計算してみてください。心身の不調で働けない状態なら、辞める前に傷病手当金や有給休暇など、使える制度がないかを先に確認することをおすすめします。

Q. 親や家族に相談するべきですか?

必須ではありません。ただ、実家に一時的に身を寄せられる、少しの間だけ援助を受けられるといった選択肢があるなら、辞める前に伝えておくと、いざという時の安心材料になります。一人で抱え込む必要はありません。

Q. 空白期間ができると、転職で不利になりませんか?

空白期間の長さそのものより、その期間をどう過ごし、どう説明するかが見られることが多いです。私自身、失業手当を受けている間は読書や英語、プログラミングの勉強をしていて、面接では「スキルアップに充てていた」と答えました。そこを深く聞かれることはありませんでした。

関連記事:無職期間の過ごし方|ブランクは転職で不利になるのか

Q. 辞めてからお金が足りなくなったらどうすればいいですか?

一人で抱え込まず、早めに公的な窓口に相談してください。お住まいの地域の社会福祉協議会には、生活福祉資金の貸付制度があります。仕事を失って家賃が払えないときは、市区町村の自立相談支援機関で、住居確保給付金の相談ができる場合もあります。雇用保険を受けられない人が、職業訓練を受けながら月10万円の給付を受けられる「求職者支援制度」もあります。いずれも条件があるので、まずは窓口で状況を伝えてみてください。

まとめ

次の仕事が決まっていないまま辞めるのは、特別なことでも無謀なことでもありません。調査を見ても、約4割の人が同じ選択をしています。

それでも不安が消えないのは当然です。その不安を和らげるのは、気合いや根性ではなく、数字で具体的に見積もっておくことだと思います。

  • 自分の生活費が、月にいくらかかるか
  • 失業保険が、いつから、いくらもらえそうか
  • 住民税や健康保険、年金の支払いが、いつ発生するか

この3つを紙に書き出してみるだけで、漠然とした怖さは、少しずつ対処できる課題に変わっていきます。

もし今、心や体の調子を崩しかけているなら、辞め方を考えるより先に、誰かに相談することを優先してください。こころの耳(厚生労働省)や、お住まいの地域の労働局にある総合労働相談コーナーは、無料で話を聞いてもらえる窓口です。

次が決まっていないからといって、焦って何かを決める必要はありません。できることから一つずつ、確認していきましょう。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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