「このまま休職を続けるべきか、もう辞めてしまうべきか」。傷病手当金を受け取りながら、毎日のように考えていませんか。
私も同じ場所にいたことがあります。適応障害で休職し、傷病手当金を受け取りながら、休職を続けるか、思い切って転職活動を始めるか、タイミングを探っていました。でも、どちらも簡単には決められませんでした。結局、私は退職を選びました。
休職中の退職で一番怖いのは、お金のことです。特に「傷病手当金が、退職のタイミング次第で打ち切られるかもしれない」という不安は大きいと思います。この記事では、傷病手当金を止めないために退職日にどこを確認すればいいか、そして退職後にもらえるお金の全体像を整理します。
なぜ「退職のタイミング」で傷病手当金が止まってしまうのか
傷病手当金は、本来「会社の健康保険に加入している人」が対象の給付です。退職すると、その資格を失います。
ただし、健康保険法104条に基づいて、一定の条件を満たしていれば、退職後も引き続き傷病手当金を受け取れる「継続給付」という仕組みがあります。
問題は、この継続給付には細かい条件があり、1つでも欠けると退職後の分は受け取れなくなってしまうことです。しかも、その条件は「退職日の時点」(健康保険の資格を失う日の前日)で満たしているかどうかで判断されます。つまり、退職日の決め方そのものが、傷病手当金を受け取れるかどうかを左右するということです。
ここを知らずに退職日を決めてしまうと、本来もらえたはずのお金を取りこぼすことになりかねません。順番に確認していきましょう。
休職中でも退職はできる。まず知っておきたい法的な根拠
前提として、休職中であっても退職すること自体は可能です。
民法627条1項では、期間の定めのない雇用契約の場合、申し出から2週間が経過すれば雇用は終了するとされています。
就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」といった規定がある会社も多くあります。一般的には民法の規定が優先されると考えられていますが、休職中は会社とのやり取りに時間がかかることもあります。傷病手当金の条件に合わせて退職日を決めるためにも、まずは就業規則を確認し、余裕を持って相談を始めるのが安全です。
なお、契約期間の定めがある有期雇用の場合は、原則として契約期間の途中で一方的に辞めることが制限されています(民法628条)。この場合は、通常の正社員の休職とは条件が異なるので、個別に確認が必要です。
傷病手当金を打ち切られないために、退職日に確認すべき3つの条件
退職後も傷病手当金の継続給付を受けるためには、退職日の時点で、次の3つをすべて満たしている必要があるとされています。
- 退職日まで、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること(任意継続の期間は含まれません)
- 退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあること 退職日までに、連続した3日間の「待期」を終えていて、医師から働けない状態だと認められている必要があります。「そろそろ退職しよう」と思い立った時点で、まだ申請の手続きが済んでいない場合は、先に協会けんぽや健康保険組合に確認したほうが安心です。
- 退職日に出勤しないこと 退職日に出勤すると、その時点で「働ける状態」とみなされ、退職後の傷病手当金を受け取れなくなります。あいさつや引き継ぎのために「最後だから顔を出しておこう」と考える方もいますが、継続給付を受けたい場合は、退職日は出勤しないようにしてください。
この3つは、私が当時、健康保険組合の窓口に何度も電話で確認したポイントでもあります。自己判断だけで進めると、後から「条件を満たしていなかった」と分かって落ち込むこともあります。退職日を決める前に、一度、加入している健康保険組合か協会けんぽの窓口に、自分のケースで条件を満たしているか確認することをおすすめします。
退職前に、会社と健康保険組合にここだけは聞いておく
実際に動くとなったら、次の3つを、退職日を確定させる前に確認しておくと安心です。
- 現在の被保険者期間と、傷病手当金の支給開始日:人事や健康保険組合の記録と、自分の認識にズレがないかを確認します
- 退職日の候補日に、出勤予定が入っていないか:あいさつや返却物の受け渡しなどで、退職日に出社する予定が組まれていないかを確認します
- 退職後の継続給付の手続き方法と、必要書類:会社経由ではなく、自分で健康保険組合に申請する形になることが多いので、窓口と提出先を事前に把握しておきます
これらは、人事担当者だけでは答えられないこともあります。私自身も、条件は健康保険組合に直接電話をかけて確認しました。遠慮せず、直接問い合わせてよい内容です。
退職後にもらえるお金の全体像
傷病手当金の継続給付以外にも、退職後に関係してくるお金の制度があります。それぞれ条件が異なるので、簡単に整理しておきます。
- 傷病手当金の継続給付:上の条件を満たしていれば、退職後も引き続き受け取れる可能性があります。支給期間は、支給が始まった日から通算して1年6か月までです。働ける状態になった時点で終了し、その後また働けなくなっても再開はされません
- 失業保険(基本手当):こちらは「働ける状態にあること」が前提の制度です。傷病手当金を受け取っている間(=働けない状態にある間)は、基本手当を同時に受け取ることはできないとされています。失業保険を受け取れる期間は原則として退職の翌日から1年ですが、病気などで30日以上続けて働けない場合は、ハローワークで「受給期間の延長」を申請すると、最大3年延ばせます。延長しておけば、体調が回復してから失業保険を受け取る流れにできます
- 退職後の健康保険の選択:会社の健康保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するかを選ぶ必要があります。保険料の計算方法が異なるため、どちらが自分にとって負担が軽いか、事前に見積もりを取っておくと安心です
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どれも「いつ」「どの順番で」申請するかで、受け取れる金額や期間が変わってきます。一人で全部を抱え込まず、健康保険組合やハローワークの窓口で、自分の状況を説明しながら確認してください。
よくある不安・Q&A
Q. 傷病手当金は、退職後いつまでもらえますか?
支給が始まった日から通算して1年6か月までです。退職したからといって、そこから新たに期間が始まるわけではありません。自分があと何か月受け取れるのかは、健康保険組合に確認すると教えてもらえます。
Q. 傷病手当金と失業保険は、同時にもらえますか?
一般的には、同時に受け取ることはできないとされています。傷病手当金は「働けない状態」が前提、失業保険は「働ける状態」が前提のため、制度の目的が重なっていないからです。体調が回復してから、失業保険の申請に切り替える流れになることが多いです。その間に失業保険を受け取れる期間が過ぎてしまわないよう、受給期間の延長を申請しておいてください。
Q. 退職日を会社と調整するのが難しい場合は、どうすればいいですか?
休職中は特に、会社とのやり取り自体がつらく感じられることもあると思います。まずは健康保険組合に「この日で退職した場合、条件を満たせるか」を確認したうえで、会社には希望日を伝える、という順番で進めると、気持ちの負担が少し軽くなります。
どうしても直接のやり取りが難しい場合は、退職代行という選択肢を使う方もいます。ただし、退職代行は運営元によってできることが変わります。弁護士運営か労働組合運営のサービスであれば、退職日の調整など会社との交渉も含めて対応してもらえますが、それ以外の民間業者は交渉行為ができない場合があるので注意が必要です。また、退職日が傷病手当金の条件に影響するかどうかの判断は、どの退職代行でも代わりにしてくれるものではありません。事前に健康保険組合への確認だけは、自分で済ませておくことをおすすめします。
まとめ
休職中に退職するかどうかは、気持ちの面でもお金の面でも、簡単に決められることではありません。私自身も、休職を続けるか辞めるか、何度も迷いました。
ただ、少なくとも傷病手当金に関しては、退職日をいつにするかで受け取れるかどうかが変わってくる、という事実だけは知っておいて損はありません。今日すぐに退職日を決める必要はありません。まずは健康保険組合や協会けんぽの窓口に、自分の状況を伝えて、条件を満たせるかどうかを確認するところから始めてみてください。
そして、もし今の体調が万全でないなら、お金の計算よりも先に、休むこと・相談することを優先してください。退職のタイミングは、後からでも整えられます。
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