試用期間中に辞めたい人へ|履歴書への影響と円満な退職手順

試用期間中に辞めたいときの退職手順と、履歴書や転職への影響を解説する記事

入社してまだ数週間、あるいは1ヶ月ほどなのに、もう「辞めたい」と感じている。そんな自分を、情けないと思っていませんか。

「せっかく入れてもらったのに」「周りはもっと大変な中で頑張っているのに」。そう思って、誰にも言えずに一人で抱えている人は少なくありません。

私はこれまで7回転職してきましたが、新しい職場に入ってすぐ「あ、これは合わないかもしれない」という感覚が湧くこと自体は、珍しいことではないと感じています。

この記事では、試用期間中に辞めることが法律上どう扱われるのか、円満に伝えるための手順、そして履歴書や次の転職活動への影響まで、法律や公的な調査データをもとに順番に整理していきます。

目次

入社してすぐ「辞めたい」と感じるのは、珍しいことではありません

まず最初にお伝えしたいのは、試用期間中に「辞めたい」と感じるのは、あなたが弱いからでも、我慢が足りないからでもないということです。

試用期間は、もともと企業側があなたの適性を見極めるための期間として設けているものですが、同時にあなたの側にも「この会社でやっていけそうか」を見極める期間でもあります。入ってみて初めて分かる社風、仕事内容のズレ、人間関係。これらに違和感を覚えるのは、むしろ自然な反応です。

実際、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2012年に実施した調査(2014年公表)では、86.9%の企業が試用期間を設けていました。期間で最も多いのは「3ヶ月程度」で、新卒採用では66.1%、中途採用では65.7%です。つまり、多くの会社が「入社してすぐの数ヶ月は、お互いに様子を見る期間」だと前提しているということです。これはやや古いデータではありますが、試用期間という制度自体が「入ってみないと分からないことがある」という前提で作られていることは、今も変わっていないでしょう。

また、厚生労働省が2025年10月に公表した「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、大学卒の就職者のうち1年目に離職した人は12.1%、3年以内では33.8%でした。試用期間中という、さらに早い段階での離職も、あなたが思っているより特別なことではありません。

ただし、「辞めたい」の裏側に強い不安や体調の落ち込みがある場合は、辞め方を考える前に、まず休むこと、誰かに相談することを優先してください。心身の限界は、仕事の続け方の工夫でどうにかなるものではないことがあります。「こころの耳」(厚生労働省が設置する相談窓口)のような公的な窓口も選択肢にあります。

試用期間中でも退職はできるのか

結論から言うと、試用期間中であっても、退職すること自体は可能です。ただし、雇用の形によって考え方が少し変わります。

正社員など、期間の定めがない雇用の場合

民法627条1項では、期間の定めのない雇用契約について、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了すると定められています。会社側の承諾は必要ありません。

試用期間について、判例は「解約権留保付労働契約」と解しています(三菱樹脂事件、最高裁大法廷判決昭和48年12月12日)。これは主に「会社側が本採用を拒否できる根拠」を説明した判例ですが、この考え方からすると、試用期間中であってもすでに労働契約は成立しているという整理になります。そのため、一般的には、試用期間中の正社員にも民法627条の退職の自由が及ぶと考えられています。

就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」と書かれているケースもありますが、法律が優先されるため、こうした規定だけを理由に退職を引き延ばされる義務はない、というのが一般的な理解です。ただし円満に辞めるという観点では、法律上の最短ラインに頼るよりも、できるだけ早めに相談する方が望ましいのは言うまでもありません。

契約社員・派遣など、期間の定めがある雇用の場合

一方、契約期間が決まっている有期雇用の場合は、民法628条が関係します。契約期間の途中で辞められるのは、原則として「やむを得ない事由」がある場合とされていて、正社員のように「いつでも申し出られる」形ではありません。ただし、契約期間が1年を超える契約では、1年を過ぎればいつでも退職を申し出られるという例外もあります(労働基準法137条。一部の専門職などは対象外)。試用期間付きの有期契約で辞めたい場合は、無期雇用の正社員とは状況が異なる点に注意してください。迷う場合は、お住まいの地域の労働局にある総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口に確認するのが安心です。

「辞めたら損害賠償される」という不安について

よく聞かれる不安のひとつに、「すぐ辞めたら違約金や損害賠償を請求されるのでは」というものがあります。

労働基準法16条では、労働契約の不履行についてあらかじめ違約金や損害賠償額を決めておくこと自体を禁止しています。つまり、「3ヶ月以内に辞めたら10万円」のような取り決めがあったとしても、それ自体が無効です。

一方で、法律上は「現実に生じた具体的な損害」を事後的に請求すること自体は禁じられていません。ただし、通常の退職の仕方(きちんと申し出て、最低限の引き継ぎをする)であれば、会社側がそうした請求をして実際に認められるケースは限られており、ハードルは高いと言われています。過度に恐れる必要はありませんが、不安が大きい場合は、退職の意思を伝える前に一度、公的な相談窓口や弁護士に状況を聞いてみると安心材料になります。

円満に辞めるための伝え方と手順

法律上は辞められるとわかっても、実際に伝えるとなると勇気がいりますよね。ここでは、角を立てにくい伝え方の流れを整理します。

1. まずは直属の上司に、口頭で伝える
退職は、メールやチャットでいきなり切り出すより、まず上司に時間をもらって口頭で伝える方が、その後のやり取りがスムーズになりやすいです。「ご相談があります」と事前に一言添えて時間を取ってもらいましょう。

2. 理由は、具体的に説明しすぎなくていい
「人間関係が合わない」「残業が多すぎる」といった本音をそのまま伝える必要はありません。「入社前に想像していた業務内容と差があり、自分の適性を考え直しました」「体調面で続けるのが難しいと感じています」など、事実の範囲で、相手を責めない言い方を選ぶと角が立ちにくくなります。

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3. 退職届は書面で残す
口頭で伝えた後は、退職届を書面で提出しておきましょう。「言った・言わない」のトラブルを避けるためにも、日付の入った書面を残すことは大切です。

4. 引き継ぎは、できる範囲でいい
試用期間中であれば、担当業務もまだ限られているはずです。完璧な引き継ぎ資料を作る必要はなく、現状分かっている範囲をメモにまとめる程度で十分なことがほとんどです。「ここまでしかできずすみません」と一言添えるだけでも印象は変わります。

直接言うのがどうしても難しいとき

ここまで手順を説明しましたが、中には「上司の顔を見るのも怖い」「もう出社自体が限界」という方もいると思います。そういう場合に選択肢になるのが、退職代行サービスです。

ただし、退職代行には運営形態による大きな違いがあることを知っておいてください。

  • 民間企業が運営するサービス:退職の意思を会社に伝える「使者」としての役割に限られます。報酬を受け取って有給消化や退職日などの交渉まで行うと、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたる可能性があるため、本来は交渉はできません。
  • 労働組合が運営するサービス:憲法と労働組合法を根拠に、団体交渉権を使って会社と話し合うことができます。有給消化の相談など、民間業者より踏み込んだやり取りが可能です。
  • 弁護士が運営するサービス:未払い給与の請求や、トラブルが想定される場合の法的な交渉まで対応できます。

帝国データバンクの調査(2025年10月24日発表)によると、退職代行サービスを展開する事業者は全国に少なくとも52法人あり、約6割が民間経営、弁護士法人による運営は3割強にとどまっています。利用料金の平均は29,410円で、弁護士法人は約44,700円、民間経営は約22,500円でした。同社が2026年9月に発表した続報では、平均料金は約2.7万円とやや下がった一方、2025年10月時点で確認できた主要な事業者のうち26.9%が、この1年でサービスを停止した可能性があると報告されています。安さだけで選ぶと、いざという時に連絡が取れないリスクもあるということです。

試用期間中は、まだ有給休暇が発生していないケースが多く、交渉の余地自体が小さいこともあります。それでも「もう直接話すのは無理」という状況であれば、民間業者の安さだけで選ばず、交渉力のある労働組合運営か弁護士運営のサービスを検討することをおすすめします。

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履歴書や次の転職活動にどう影響するか

「試用期間中に辞めたことは、履歴書に書かないといけないの?」という疑問も多く聞かれます。

結論としては、在籍した事実がある以上、職歴として書くのが基本です。短期間であっても、空白期間として説明に困るより、きちんと記載したうえで、面接で聞かれたときに簡潔に答えられるようにしておく方が、結果的に印象は悪くなりにくいです。

伝え方のポイントは、前職を否定する言い方を避けることです。「人間関係が最悪だった」ではなく、「入社前に想定していた業務内容との違いから、早い段階で見直しの判断をした」というように、事実ベースで淡々と話す方が、採用側には冷静な印象を与えやすくなります。

企業側の受け止め方についても触れておきます。マイナビの「中途採用実態調査2025年版」によると、中途採用の現場では「入社後9.6ヶ月以内の離職」を早期離職の目安と捉える傾向があるとされています。つまり、採用する側も「入社後1年未満での離職」自体は一定数起こりうるものとして想定しているということです。短期離職を過度に特別視しすぎず、次にどう活かすかを考える方が建設的です。

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給与・有給・失業保険はどうなるか

お金まわりの不安も整理しておきましょう。

給与
働いた分の給与は、日数に応じて支払われるのが原則です。試用期間中だからといって給与が出ないということはありません。

有給休暇
有給休暇は、試用期間を含めて6ヶ月以上継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した場合に発生します。つまり、入社1ヶ月〜数ヶ月での退職では、法律上の有給休暇がまだ付与されていないことがほとんどです。「有給を消化してから辞める」という選択肢が使えない時期であることは、あらかじめ知っておいた方がいいでしょう。

失業保険(雇用保険の基本手当)
自己都合での退職の場合、離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが受給の条件です。今の会社だけでは12ヶ月に届かなくても、前の会社の被保険者期間を通算できる場合があります(前の会社を辞めてから1年以内に今の会社で加入していて、その間に失業保険などを受け取っていない場合など)。

逆に、新卒で入社した会社を試用期間中に辞める場合など、通算しても12ヶ月に届かないときは、対象にならないことが多いと考えておいた方がいいでしょう。自分が通算できるかどうかは、ハローワークで確認できます。

ただし、退職に至った理由が、求人票や採用面接で聞いていた話と実際の労働条件が大きく違っていた、といった会社側の事情にある場合は、通常の自己都合退職とは異なる扱いになる可能性もあります。心当たりがある場合は、お住まいの地域のハローワークの窓口で、ご自身の状況を具体的に伝えて確認してみてください。

会社から退職を拒まれたときの考え方

「辞めたい」と伝えても、会社側がすんなり受け入れてくれるとは限りません。「後任が決まるまで待ってほしい」「試用期間中に辞めるなんて非常識だ」と言われることもあるかもしれません。

ですが、先ほど整理したとおり、期間の定めのない雇用契約であれば、退職の申し入れから2週間が経過すれば、会社の承諾があってもなくても契約は終了します。退職届を受け取らない、聞かなかったことにする、といった対応をされたとしても、法律上の効力自体は変わらないと考えられています。

不安なときは、退職届を内容証明郵便で送る、退職の意思を伝えたやり取りをメールなど形に残る方法で残す、といった工夫をしておくと安心材料になります。

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また、「辞めたら今までの研修費用を払え」「損害賠償を起こす」といった言い方で、退職そのものを思いとどまらせようとするケースも聞かれます。前述のとおり、違約金や賠償額をあらかじめ決めておくこと自体は法律で禁じられています。研修費用の返還については、取り決めの中身によって判断が分かれることもあるので、言われたら一人で判断せず相談してください。こうした発言をされて不安が大きいときほど、一人で抱え込まず、次に挙げる公的な窓口に相談することをおすすめします。

関連記事:退職したら研修費用を返還?違約金で辞められない人へ

相談できる窓口

直接会社とやり取りする前に、一度第三者に状況を話してみるだけでも、気持ちが整理されることがあります。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局):退職、賃金、ハラスメントなど、労働条件全般について無料で相談できる窓口です。会社との間で起きていることを、法律的にどう捉えられるか聞くことができます。
  • こころの耳(厚生労働省):心身の不調を感じているときに利用できる相談窓口です。「辞め方」よりも先に、まず自分の状態を誰かに話したいときに向いています。
  • 労働基準監督署:給与の未払いなど、労働基準法に関わる具体的なトラブルがある場合に相談先になります。

どの窓口も、必ずしも「辞める・辞めない」を決めてから相談するところではありません。迷っている段階で話を聞いてもらうだけでも、状況を整理する助けになります。

よくある不安・Q&A

Q. 試用期間中に辞めると、会社にものすごく迷惑をかけてしまいますか。
もちろん、採用や教育にかけた時間とコストがゼロになるわけではありません。ただ、試用期間はそもそも「お互いに見極める期間」として設けられているものです。合わないと感じたまま無理に続けることの方が、長い目で見てお互いにとって良くない結果になることも少なくありません。申し訳なさを抱えすぎず、きちんと筋を通して伝えることに意識を向けてみてください。

Q. 短期間で辞めたことは、次の転職でずっと不利になりますか。
前述のとおり、入社後1年未満での離職自体は、採用側も一定数想定しているものです。大切なのは、短期離職そのものより、そこから何を学び、次にどう活かそうとしているかを自分の言葉で説明できるかどうかです。前職を否定する言い方ではなく、事実ベースで淡々と話せるように、一度振り返りの時間を取ってみることをおすすめします。

Q. 「辞めたい」と伝えたら、引き止められて辞めさせてもらえないのではと不安です。
引き止められること自体はよくありますが、期間の定めのない雇用であれば、民法上、退職の申し入れから2週間が経過すれば契約は終了します。口頭で強く引き止められたとしても、法律上の扱いが変わるわけではありません。不安が大きい場合は、退職届を書面で残す、会社とのやり取りをメールなど形に残る手段で行う、といった準備をしておくと、気持ちの面でも落ち着いて臨みやすくなります。

まとめ

試用期間中に「辞めたい」と感じることは、珍しいことではありません。むしろ、試用期間という制度自体が、入ってみないと分からないことがあるという前提で作られています。

法律上は、期間の定めのない雇用であれば、申し出から2週間で退職できます。伝え方の工夫や、引き継ぎの範囲を小さく区切ることで、角を立てずに切り上げることも十分可能です。

それでも、上司に直接伝えるのがどうしても難しい、出社そのものがつらいというときは、労働組合運営や弁護士運営の退職代行サービスという選択肢もあります。まずは一人で抱え込まず、信頼できる人か、公的な相談窓口に、今の状況を話してみることから始めてみてください。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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