40代・50代でも退職代行を使う人が増えている|ミドル世代のリアルな事情と失敗しない使い方

40代・50代の退職代行 | やめどき研究所

退職代行というと、どこか「20代の若手が使うもの」というイメージを持たれがちです。私も最初はそう思っていました。

でも実際にデータを見ると、40代・50代の利用は決して珍しいものではありません。むしろ、年齢を重ねてからのほうが「言えない理由」が増えていく、というのが私の実感です。

私自身、7回の転職を経験してきました。20代の頃は不動産・運送業界でサービス残業が当たり前の環境にいましたし、3年前には前職で適応障害の診断を受け、それを理由に会社へ退職の意思を伝えたこともあります。

年齢を重ねてから思ったのは、「退職代行を使うことが恥ずかしい」という感覚は、私にはほとんどなかったということです。それより強かったのは、「次の仕事が決まりにくいかもしれない」という不安のほうでした。

この記事では、40代・50代が退職代行を使う際に実際に気になるポイントを、データと私自身の経験をもとに整理していきます。


目次

40代・50代の「言い出しにくさ」は、若い世代と種類が違う

まず知っておいていただきたいのは、退職代行を利用しているのは20代だけではないという事実です。

東京商工リサーチが企業側に行った調査(2025年6月発表)では、退職代行を利用した従業員の年代は20代が60.8%で最多、30代26.9%、40代11.0%、50代6.4%、60代以上2.8%という結果でした(複数回答のため合計は100%を超えます)。同社はこの結果を「50代以上も約1割」とまとめています。

一方、マイナビが転職者本人を対象に行った調査では、40代の利用率は17.3%でした。この二つは「企業が見た利用者の年代分布」と「個人の利用率」という、まったく別の指標です。混同されがちですが、どちらも「40代・50代にとって、もう珍しい選択肢ではなくなっている」ことを示しています。

なぜ年齢を重ねるほど、退職の申し出が難しくなるのか。私の経験から言うと、理由は主に二つあります。

引き留めが強くなりやすい

一つは、役職や勤続年数が積み重なるほど、会社からの引き留めが強くなりやすいことです。特にブラックな傾向のある会社ほど、「お前が抜けたら現場が回らない」「後任が見つかるまで待ってくれ」というような引き留めの言葉を使ってくることがある、というのが実感としてありました。

関連記事:「しつこい引き止めの断り方|情に流されず辞める言い方」

「言い出しにくさ」は年齢では消えない

もう一つは、「言い出しにくさ」自体は、年齢を重ねても変わらなかったということです。

20代の頃に感じていた「上司に切り出す怖さ」は、40代になったからといって消えるわけではありません。責任のある立場になるほど、むしろ「周りに迷惑をかける申し訳なさ」が重くなり、言葉にするタイミングを逃してしまいやすくなる、というのが私の感覚です。


診断書を出す前に、辞める決断をしたほうがいいと思う理由

私が前職を辞めるとき、医師の診断書があったことは、会社に退職の意思を伝えるうえで一つの後押しになりました。「体調のため」という理由があると、周囲も無理には引き止めにくくなります。

ただ、ここで一つお伝えしたいことがあります。

私は、診断書を出さないと言い出せない状況になる前に、離職を決断したほうがいいと考えています。診断書が必要になるほど心身が限界に近づいているとしたら、それはすでに「辞めどき」を過ぎているケースが多いからです。

私自身、診断書を出した時点では、すでに相当すり減っていました。その後、休職を経て退職し、回復までに長い時間がかかりました。

関連記事:「診断書を出しても会社が動かないとき|適応障害と診断された私が経験したこと」

もちろん、すでに心身がつらい状態にある方は、まず医療機関に相談することを優先してください。退職代行は「万能の解決策」ではなく、「言い出す部分だけを代わりに担ってくれる手段」です。心身の限界がある場合は、退職と並行して、医師やカウンセラー、あるいは会社の産業医への相談も検討していただきたいところです。


40代・50代が退職代行を使うときに気になる法的な前提

退職代行を検討するにあたって、まず知っておきたい法律上の前提を整理します。

退職の申し出から2週間で契約が終了する(民法第627条第1項)

雇用の期間に定めがない場合、退職の申入れから2週間が経過すると雇用契約は終了するとされています。就業規則に「1ヶ月前に申告」といった規定があっても、この民法上のルールに基づいて2週間前に退職を申し出た場合、会社側がこれを拒否したり、就業規則を理由に強制したりすることは基本的にできません。

これは年齢や勤続年数、役職に関わらず適用される一般的なルールです。もちろん、有期雇用契約や公務員など個別事情によって例外があるため、ご自身の雇用形態については一度確認しておくと安心です。

「交渉」ができるかどうかは、運営形態で変わる

ここが40代・50代にとって特に重要なポイントです。退職代行サービスは、大きく「民間企業」「労働組合」「弁護士(弁護士法人)」の3種類に分かれます。

無資格の業者が「退職したい」という意思を伝えるだけであれば違法ではありませんが、有給消化や退職金の交渉に踏み込むと、弁護士法第72条が禁じる非弁行為に該当する可能性があります。東京弁護士会も2024年11月に「退職代行サービスと弁護士法違反」という注意喚起を公表し、「退職代行サービスの利用を考える際には、退職だけでなく、退職に関係して発生する法律的な問題にも目を向ける必要がある」と呼びかけています。

労働組合は、憲法および労働組合法で保障された「団体交渉権」を持っているため、退職日の調整や有給休暇の消化、退職金の支払いといった条件について、会社と交渉することが可能です。弁護士であれば、それに加えて未払い賃金の請求や損害賠償への対応まで担うことができます。

実際、2026年2月には大手退職代行サービスの代表らが弁護士法違反の疑いで逮捕され、同年8月には運営会社と前代表者に有罪判決が言い渡されました。この一件を受けて、非弁行為に対する社会的な目は、これまで以上に厳しくなっています。

関連記事:「大手退職代行業者の弁護士法違反事件でわかった落とし穴|弁護士・労組・民間の違いと安全な選び方」

退職代行の利用は、企業にどう見られているか

東京商工リサーチが2026年4月に発表した調査(6,425社が回答)によると、2024年1月以降に退職代行業者を利用した従業員の退職があった企業は8.7%で、前回調査から1.5ポイント増加しました。大企業では21.3%と、中小企業の2.7倍にのぼります。

企業側の対応を見ると、「業者を挟んで退職手続きを進める」が41.3%で最多、「取り合わない」が30.4%、「連絡内容に従う」が28.3%でした。また、弁護士や労組以外の業者から、有給休暇の取り扱いや退職日の交渉など「非弁行為」に触れる可能性のある通知を受けた企業は3割に達しています。

そして、40代・50代にとって最も気になるのがこの数字です。

前職での退職代行利用がわかった場合、「採用しない」と回答した企業は26.0%、「採用に慎重になる」は49.3%で、合計75.3%の企業が退職代行利用者の採用に慎重な姿勢を示しています。「影響しない」と答えたのは23.7%にとどまりました。

これは軽視できないデータです。だからこそ、どの運営形態の退職代行を選ぶかが、20代の利用よりも重みを持つと言えます。


ミドル世代ならではの不安「次の仕事、決まるのだろうか」

私自身、転職を考えるたびに感じていたのが「次の仕事が決まりにくいかもしれない」という不安でした。20代の頃はまだ「若さ」で拾ってもらえる感覚がありましたが、年齢を重ねるほど、次への不安は形を変えて重くなっていきます。

ここで、40代・50代の方に知っておいていただきたい制度が二つあります。

失業保険の給付日数は、退職理由で大きく変わる

自分の意思による「自己都合退職」の場合、所定給付日数は90日〜150日の範囲で、雇用保険の被保険者期間によって決まります。ここには年齢による差はありません。

一方、退職勧奨やパワハラなどを理由とする「特定受給資格者」に認定される場合は、年齢と勤続年数の組み合わせで給付日数が決まり、自己都合よりも大幅に手厚い保護を受けられる可能性があります。45〜59歳・勤続20年以上のケースでは、最大330日(約11ヶ月分)の給付を受けられる場合があります。

ご自身の退職が「自己都合」か「会社都合(特定受給資格者)」に該当しうるかは、ハローワークの判断によるため、退職代行を利用したこと自体が自動的に会社都合になるわけではありません。パワハラや退職勧奨があった場合は、その経緯や記録をハローワークで説明することが重要になります。

関連記事:「自己都合退職でも失業保険は早くもらえる?2025年改正後の給付制限と確認ポイント」

「決まりにくいかもしれない」という不安は、行動で減らせる

次の仕事への不安をゼロにすることは難しいですが、退職前・退職後にできることはあります。教育訓練給付金など公的な支援制度を使ってスキルを整えたり、求職者支援制度やハローワークの窓口を活用したりすることも選択肢の一つです。

不安を抱えたまま一人で動くより、使える制度を知っておくだけで、心の余裕は変わってきます。

関連記事:「辞めた後の選択肢|転職・スキルアップ・休養のリアルな進め方」


40代・50代が退職代行を選ぶときに気をつけたいこと

ここまでの前提を踏まえると、40代・50代が退職代行を選ぶ際は、料金の安さだけで選ばないことが大切だと考えています。

運営形態別の目安

運営形態できること料金の目安
民間企業退職意思の伝達のみ(交渉は非弁行為リスクあり)1万〜3万円程度
労働組合有給消化・退職日などの条件交渉が可能2万〜3万円程度
弁護士・弁護士法人交渉に加え、未払い賃金請求・損害賠償対応まで可能2.5万〜10万円超(着手金+成功報酬の場合あり)

※料金は変動するため、依頼前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください。

40代・50代の場合、勤続年数が長く有給休暇や退職金が絡むケースが多いため、交渉が可能な労働組合運営・弁護士運営のサービスを選ぶことが、結果的にトラブルを避ける近道になりやすいと感じています。

安さだけで民間業者を選び、有給消化の交渉まで期待してしまうと、対応してもらえなかったり、会社側に「取り合わない」対応をされたりするリスクがあります。実際、企業側の3割が「取り合わない」と回答しているのは、前述のデータの通りです。

また、運営窓口が民間企業でありながら労働組合と提携する形をとっているサービスもあります。交渉部分の責任の所在がわかりにくくなりやすいため、労働組合が直接運営しているサービスか、弁護士・弁護士法人が運営しているサービスを軸に検討することをおすすめしています。

具体的なサービスの比較は、こちらの記事でまとめています。弁護士運営・労働組合運営に絞って、料金と対応範囲を整理しています。

関連記事:「【業者比較】退職代行の評判・口コミ|料金と運営元で選ぶ失敗しない選び方」


よくある不安・Q&A

Q. 40代・50代で退職代行を使うのは、恥ずかしいことですか?

私自身は、年齢的な恥ずかしさを感じたことはありませんでした。退職代行はあくまで「言い出す部分を代わりに担ってもらう手段」であり、年齢に関係なく使える選択肢だと考えています。むしろ、責任のある立場だからこそ言い出しにくい、という状況は40代・50代に多く見られます。

Q. 退職代行を使ったことが、次の転職に影響しますか?

企業側の調査では、退職代行の利用がわかった場合に「採用しない」26.0%、「採用に慎重になる」49.3%と、合計75.3%が慎重な姿勢を示しています。これは事実として受け止める必要があります。

ただし、これは「退職代行を使った経緯」全体を見て判断されるものです。転職活動では、退職理由をどう説明するかのほうが重要になるケースが多いです。また、利用歴が判明する場面は限られており、「影響しない」と答えた企業も23.7%あります。

Q. 管理職でも退職代行は使えますか?

管理職であることを理由に利用できないわけではありません。ただし、引き継ぎに関する規定や、勤続年数の長さから条件交渉が複雑になりやすい傾向があるため、交渉力のある労働組合運営・弁護士運営のサービスを選ぶことをおすすめします。

Q. 引き継ぎを終わらせないと辞められませんか?

引き継ぎは信義則上の義務とされますが、「完璧に終わらせること」が退職の法的条件ではありません。詳しくはこちらの記事で整理しています。

関連記事:「『引き継ぎが完璧じゃないと辞められない』は思い込み|迷惑をかける罪悪感を手放す線引き」

Q. 心身がすでに限界の場合、どうすればいいですか?

まず医療機関への相談を優先してください。診断書があると、退職の意思を伝える際の後押しになる場合がありますが、診断書が必要になるほど追い込まれる前に、離職を決断する選択肢も考えておいていただきたいと思っています。


まとめ:年齢のせいで諦める前に、選択肢を知っておく

40代・50代の退職代行利用は、もはや珍しいものではありません。企業側の調査でも、個人側の調査でも、一定の割合でミドル世代が利用していることが数字として表れています。

ただ、若い世代と違って「勤続年数が長いことによる交渉の複雑さ」や「次の仕事への不安」が重くなりやすいのも事実です。しかも、企業の75.3%が退職代行利用者の採用に慎重な姿勢を示しているというデータもあります。

だからこそ、料金の安さだけで選ばず、労働組合運営・弁護士運営のサービスを軸に検討していただきたいと思います。

もし今、「言い出せない」まま時間だけが過ぎている状態であれば、それは決して珍しいことではありません。私も何度も同じ怖さを経験してきました。まずは、ご自身の状況が自己都合か会社都合(特定受給資格者)に近いのかを整理しつつ、無理のない形で一歩を検討してみてください。


この記事は、運営者ポン太の実体験をもとに書いています。法律や制度に関する内容は執筆時点の情報であり、個別のケースについては専門家や公的機関にご確認ください。また、当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

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この記事を書いた人

やめどき研究所 運営者。HSP・内向型の40代。不動産営業・運送・自動車工場など7回の転職を経験。3年前に適応障害の診断を受け、無理して合わせない働き方を模索中。「辞めたいのに辞められない人」の最初の一歩を応援します。

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